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バラバラの影

2019/05/15

友人の話。
幼い頃、部屋で寝ていた彼女は
怒鳴り声で目が覚めた。
階下で両親が喧嘩をしている。
(嫌だなあ)
そう思ってふと天井を見上げると、
闇の中、何かがゆらゆらと揺れている。
それは、おかっぱ頭の女の子のシルエット。
(あ、あれは自分の影だな)
明かりのない部屋の中、
ふとんで横になっている自分の影が
天井に映りこむ筈がない。
しかし、おかっぱ頭の幼い彼女は
漠然とそう考えて、また眠りに落ちていった。
それから、しばらく経ったある晩。
彼女はまた両親が言い争う声で目が覚めた。
(いやだなあ)
ため息まじりに天井を見上げると、
そこにまた影があった。
ゆらゆらと揺れる影。
よく目をこらして見ると、
その影は手や首のところなど、
所々がチョン切れている。
(バラバラの影だ)
やがてウトウトして寝入る。
そんな事が何回か続いたが、
やがて両親が離婚して彼女は母に連れられて
その家から引っ越し、その現象を見ることもなくなった。
月日が経った。
成人式の日、彼女は
母親にささやかな『感謝会』を開いた。
自分を立派に育ててくた母と
二人きりで楽しく食事をし、語った。
その時、ふと彼女は
昔見た『影』のことを思い出し、母に話した。
「こんなことがあったんだよ」
すると話を聞いていた母親の顔が見る見る青ざめた。
具合が悪いのかと聞くと、そうではないという。
「どうしたの?」
と問い詰めると母は、
「叔母さんが伝えに来てくれてたんだね、きっと」
と不可解な事を言う。
「あんたの家族がバラバラになるよって、伝えに来たんだよ」
母の叔母、つまり彼女にとって
大叔母にあたる人は幼い頃、
変質者に誘拐され殺されたということだった。
死体は、頭や手足が
胴体から切り離された状態で見つかったそうだ。
母に見せてもらった古い写真の大叔母は、
おかっぱ頭をしていた。
母の家系の人間は大きな転機がある際、
何かしらの形で大叔母に出会うらしい。

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