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バスに乗れない人

2019/05/09

高校三年間、通学に使ったバス。
いつも通るコース上のバス停には、
絶対に“バスに乗れない人”が居た。
その人は夏も冬も、いつも青いジャージを上に着ていて待っていた。
運転手はそのバス停に止まらないし、止まっても、
その人が乗り込む前に扉を閉めて発進してしまう。
それを見かねて、ある日、例のバス停に差し掛かった時、
「お客さん居ますよ」
と言ったら、
「居ませんよ」
と答えが返ってきた。
周りからの視線やひそひそ話で、バス内の空気は最悪。
自分の頭が沸いたと思って、
凹んだまま終点の一番最後に降りようとしたら、
「あれは乗せちゃいけないんだよ」
深い意味もわからなかったので、
「そうなんですか」
としか答えていなかったけど、
それから暫くたって、新人運転手がバスを運転し始めた頃から、
なんとなく理由がわかってきた。
そいつが乗り込むと、バス内の機械がおかしくなるらしい。
整理券を出す機械が止まって整理券が出なくなったり、
差し込んだカードが戻ってこなくなったり。
料金を表示する電光掲示板のような表が突然消えたり、
両替やお金を入れる機械が止まったり、上手く作動しなくなったり。
異常が起きたバスは、必ずあのバス停で止まって扉を開けていた。
バスに近付くと青ジャージは見えなくなるけど、
誰かが乗ってきた気配と、バスの中に一歩入った時の足音は聞こえたし、
何より空気が変わった。
バスに乗る度に思い出して、ほんのり懐かしく、怖くなる思い出。

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