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その確率は10億分の1

2019/05/02

自分の体験談ではないのだが、
実際に起きた不思議な事件の話ならたくさんあるので、試しに書いてみる。
『その確率は10億分の1』
それは、1950年3月1日の夕方に起こった。
アメリカ・ネブラスカ州にある、
ベアトリスという小さな町の、教会での出来事である。
いつものなら、午後7時半から始まる合唱の練習に、
15人の聖歌隊員はその日に限って、誰ひとりとして教会に現れなかった。
といっても、彼らがこのとき、
とりたてて特定の事件や事故に巻き込まれたわけではない。
隊員それぞれに、どうしても避けられなかったちょっとした15の出来事があり、
いけないと思いつつ、遅刻してしまっただけなのである。
例えば、ピアノを演奏する隊員は、
いつものように練習の30分前には教会へ行って、準備をしようとしていた。
だから、ベッドでひと眠りしたいという母親を、
練習の時間に間に合うように起こしてあげるつもりだった。
ところが、自分もついついうたた寝をしてしまい、
目覚めた時は時刻は7時15分をさしていたのだ。
急いで身支度を整えながら、完全に遅刻だわ、と彼女は思った。
また、教会の牧師の家では、7時10分には家を出て教会に戻る予定だった。
ところが、出かける間際になって、
妻が娘の服が汚れているのに気づき、
別の服を着せようと、アイロンをかけ始めた。
かけ終える頃には、7時20分をまわっていた。
他の隊員達も、車の故障や、宿題の片づけ、ラジオなど。
その晩、聖歌隊の15人全員の身に起こったそれぞれの遅刻の理由は、
あまりにありふれた平凡なものだった。
うっかり寝過ごす、子供に手がかかって予定が狂う、
出かける間際に車が故障する、ついつい時間を忘れる。
それは誰の日常にもよくある出来事ばかりだった。
そして、誰ひとりとして、まさかほかの聖歌隊員も全員遅刻しているなど、
思いもよらなかったはずである。
ところが、その日の7時25分。
普段なら全員が集まっているはずのまさにその時間、
突如教会で大爆発が起こり、教会の壁は砕けちり、重い天井は一直線に落下。
建物は全壊した。
もし聖歌隊員全員、あるいは誰ひとりでも時間どおり教会に集まっていたなら、
誰一人助かっていなかったであろう。
その後インタビューで、
「これまでご先輩方や、他のメンバーが遅れたことありましたか?」
の質問に対し、
「いいえ、一度も。あの時がはじめて」
と答えた。
15人の聖歌隊員全員が遅刻する確率は、
計算上10億分の1だという。
むしろ、15人全員が爆発の犠牲になることこそ、
もっとも起こりうる事態だったはずである。
END
偶然の一致とはいえ、教会だけに、神がかりな何かを感じてしまう。

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