奇妙な金属
2019/05/01
自分、金属加工業を営んでいるのですが、先日不可解な事がありました。
数ヶ月前より、左手薬指の指先を使って何かを掴むとズキン!
と痛みが走るようになっていました。
加工クズなどの切粉がちょうど神経に当たって痛む、
というのとは少し違いました。
・・・そうですね、切粉のトゲの痛みを、針で付く感じとするなら、
この痛みは、『痛みの治まった傷口』を圧迫するような痛みでしょうか。
仕事柄、トゲなどの刺さることは日常茶飯事で慣れていたため、放置していました。
先日、その場所から金属片が顔を出していたんですね。
あぁ、やっと押し出されてきたか?
そのときはそう思って、とげ抜きやピンセットで取ろうとしたのですが、どうしても取れません。
ちょうど三角形のテッペンが顔を出したような形状のため、はさんでも滑ってしまうんです。
ま、2-3日すれば勝手に取れるだろう、と思って数日が経過。
気になる度にピンセットでつまんではみるのですが、いっこうに取れる気配もない。
傷口に血がにじんでくるために、子供のように舐めるクセがついてしまいました。
で、昨夜もいじってみたものの取れず、舌で滲んだ血を舐めたときなんです。
口の中に異物感。
「ゴリッ」
すぐに吐き出してみると、小豆を半分にしたぐらいの金属塊が。
まさか?と思って指を見ると、顔を出していた金属片がいません。
どこをどう押さえても、痛くも痒くもないのです。
血も止まっています。
かすかに、ほんとうにかすかに、
シャープペンの芯で刺した程度の傷口が『点』のようにあるだけなんです。
ギュッと絞るようにつまむと血が出てきますが、
傷口はやはり『点』のように小さなものです。
それなのに、吐き出したものは直径5mm、
高さ4mm程度の円錐状の光沢金属。(こんなの→△)
で、底面(平面っぽいとこ)はあきらかに破断面の特徴を備え、
三角錐の斜めの曲面は、鏡のように周りが映り込むほどの鏡面仕上げ。
ウチで扱う工具、製造しているモノには、
そんな鏡面仕上げが施されたモノなどなにもありません。
磁石につかない非磁性金属であることも確認。
硬度はHRC65程度。
同業の方でないとわかりづらいと思いますが、
硬度65の鏡面加工非磁性金属なんて、
取り扱う機会が皆無と言っていいようなシロモノです。
仕事柄付き合いのある知り合いに、
金属の種類を調べるために宅配便で送りました。
名刺を1/3程度に切って、そこにセロハンテープで張り付け、
それを手近にあった噛むブレスケアのケースに入れて、きちんとフタもして。
知り合いから電話がかかってきました。
『おまえ、丁寧に包んで送ってきたけど、肝心の中身入れ忘れてるよ』
空っぽのブレスケアのケースに、セロハンテープを貼った名刺の切れ端だけが入っていたそうです。
いったい、どこでどうやって自分の指に食い込んだのか?
こんな大きさのモノが、体内からほとんど傷もつけずにどうやって出てきたのか?
そして、あの金属は一体何なのか?どこへ消えたのか?