大きくて古いタンス
2019/05/30
私が中学二年だった頃だと思う。
その頃は姉がもう家を出ていたので、
私は姉が使っていた部屋を自分の部屋として使い、
当然そこで毎日寝ていた。
そこには姉がもう使わなくなった服がたまっている
大きくて古いタンスが、そのまま残されていたのだが、
ある日目覚めると、そのタンスがひっくり返っていた。
上に乗っていた目覚まし時計はそのままで、
完全に上下が入れ替わっていたのである。
目覚ましをとめようとしてその事に気付いたとき、
私は不思議とか恐いとかいう前に笑いが来てしまい、
笑いながら母親に報告した。
しかし母親はその事実を確認すると、
驚く程厳しい顔で姉に電話をかけた。
そういう意味では信心深い(?)母は、
姉の所有物だったタンスの異常を
何かの予兆として感じ取ったのだろう。
電話をした時、姉はもちろん無事だった。
しかしその約一週間後、
姉の住んでいたアパートは何者かによって火をつけられ、
姉は帰らぬ人となってしまった。
火をつけた犯人は、まだ捕まっていない。