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堤防で夜釣りを楽しんでいた

2019/04/29

ある初夏の晩、
俺は友達と二人で少し遠い堤防に行き、
夜釣りを楽しんでいた。
その日は魚がぼんぼんと釣れ、
今日は大漁だなとハイテンションで友達に話しかけた。
しかし、何故だか友達がテンションが低く、
「うん…」
とか
「ああ…」
としか言わない。
釣りに集中してるのか思えば、
その動きも何やら鈍い。
何かおかしいと思いながらも、
魚は連れ続けるので
こちらは釣りに集中する事にした。
それから10分ほどして、
いきなり友達が
「ああ、だめだ!」
と言い出した。
先程からの友達の反応もあり、
俺は釣り糸でも絡まったのかと無視して釣りを続けようとすると、
いきなり釣竿を持ったまま体を翻して俺に近づいてきた。
「早く行こう!車!!」
俺が何がなんだか分からずに戸惑っていると、
「いいから、早く!!!」
友達の気迫に押され、
俺は何も持たず友達と一緒に車に乗り込んだ。
何事か聞く俺を無視してしばらくし、
友達が口を開いた。
「あれ、見えるかな?俺たちが釣ってたとこ」
友達が指差す方向に目をやると、
いつの間にか男が一人、堤防に立っていた。
この一方通行の堤防の先、
俺達とすれ違わないと居れないはずの場所に。
「あれ、ヤバイよ。歩いてきた」
「どこから?」
「 海 の 上 ! 」
友達が言うには、最初ここに来たときに、
海の遠くで光る点があったそうだ。
漁船かとあまり気にせずに釣りを始めたが、
その光が徐々に近づいてくるにつれ、
それが人間だという事が分かったそうだ。
その男は海の上をゆっくりと歩いて
こちらに向かってきており、恐ろしくなったが、
俺が釣りを楽しんでおり、
興を削がない様に何も言わなかったそうだが、
かなり近くまで来たので
我慢できずに車に戻ったとの事。
その男は、まだ竿や魚が残っている
俺達が釣っていた場所にたたずんでいた。
釣り道具が惜しい気がしたが、
明日の午前中に取りに行く事にし、
男がこちらに来る前に堤防を出発した。
翌日、その堤防近くで身元不明の死体があがった。
俺達は魚を食う気になれず、そのまま捨てた。

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