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転勤して家を1年ほど空けていた

2019/04/25

転勤して家を1年ほど空けていた間に、
何かが棲みついたのでしょうか。
家に戻ってから、
なんとなく部屋の空気が違う気がしました。
リビングのドアがガラス越しに
フラッシュを炊いたように光ったり、
誰もいない部屋から壁を叩かれる音がしたりと、
細かいヘンなことが続いていたため、
魔除の意味もこめて犬を飼うことにしました。
階下のリビングに犬を置いたせいか、
一階では何も起こらなくなりました。
ところが、この犬、
玄関から奥の階段付近には絶対行きません。
無理に引っ張っていこうとすると、
ものすごく抵抗するんです。
何度連れ出しても、餌で釣っても、
両足を突っ張って動きません。
以前飼っていた犬は、
仔犬でも唸ったりしていたので安心でしたが、
今回の犬は臆病なのか、
幽霊駆除というより幽霊探知機程度です。
犬の抵抗を証明するように、
二階で怪事が頻発するようになりましたが、
大した怖いことが起きなかったので、
「バケモノも引越しするみたいよー」
などと呑気に友人と話したりしていました。
ところがある朝、冗談でなく
本当に気持ち悪いと思うことが起きました。
階段の下から寝起きの悪い
兄の名前(仮名:トオル)を呼びました。
「トオルー、トオル!!」
一回目には聞き取れなかった声も、
二回目にははっきりと、
私の声の後にこだまするような、
被ってくるような声で家族を呼んでいるのです。
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・」
変だなと思ったのと同時に、
兄が返事をしたので起こすのを止めました。
兄の分のコーヒーを入れながら、
今の声が誰かに似ていたことに気付きました。
「あ・・・・」
そうです、それは私の声でした。
リビングに下りてきた兄にこのことを話すと、
「トオル、としか聞こえなかった」
と言うのです。
「お兄ちゃん」
という声は少し遠く、
二階から聞こえた気がしてぞっとしましたが、
「私の気のせい、空耳」
と思うことにしました。
ところがその空耳、私の耳だけでなく、
家族にも次々聞こえるようになりました。
あるときは勝手口からだったり、
あるときは玄関からだったり。
二人同時に聞こえる時もあれば、
居合せた家族全員が聞こえたりもしました。
声はその場にいない家族の声色を真似るように、
「おーい」
だったり、家族の名前を呼んだりするのです。
なんか昔話の『あまのじゃく』に似てませんか?

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