君と僕
2019/04/25
消防五年ぐらいのときの体験談。
もともと寝付きの良いほうじゃなかった俺だが、
九歳のころに中学受験の勉強初めてからは、余計に夜眠れなくなった。
んで、小五のある日、真夜中に目が覚めたもんで、
仰向けに布団に入ったまましばらくぼーっとしていた。
「起きてる……?」
って声がするもんだから、てっきり隣の布団で寝てる弟かと思って、
俺は「起きてるよ」と答えて隣を見た。
でも弟はどう見ても熟睡中。
あれ?と思って仰向けに戻ると、
俺の足元のあたりに男の子が一人立ってたんだ。
白いランニングシャツに半ズボンで、ほっそりした体格に、
キレイな顔立ちの男の子だった。
「起きてるんなら、おしゃべりしよう」
とその子は言った。
それから何を話したのかは覚えてない。
他愛もない話だったような。
割とマジな人生相談だったような。
俺は当時友達がゼロだったので、
その子に話を聞いてもらえるのがただ嬉しくって、
時間の経つのも忘れていた。
「そろそろ、帰ろうかな」
とその子が言った。
「どうしたの」
と俺が聞くと、
「朝になったら、困るから」
と言った。
俺はその子と別れるのが嫌で、ちょっと寂しくなった。
その表情を読んだのか、
「僕のウチまでおいでよ」
とその子は言ってくれた。
一瞬マジでついてこうかと思ったが、
隣に寝てた弟の存在を急に思い出してしまった。
「朝起きて僕がいなかったらみんな心配するだろうし、
よかったらまた君がこっちに来てよ」
と俺が答えると、
突然ぐちゃりと大きな音を立ててその子の頭が倍以上に膨れ上がり、
鬼のような顔に変化した。
「君が僕の事を嫌っても、僕は一生君を追い続けるから!」
と言い捨てて、その子は去っていった。
当時の俺は、家にも学校にも居場所なんてなかったから、
別にその子と一緒に行っても良かったのかもしれないと思うが、
実際行ってたらどうなってたんだろ。
ちなみに、高校の頃この話を先輩に話してたら、
本棚の上から百科事典が落ちてきた。
今度は何が起こるんだろ。