可愛い悪戯
2019/03/30
大学生の近くのアパートに
実家から越したときの話
家賃が安いのは、
バス停から遠いものだと思っていました。
数週間は何事もなく暮らしていました。
しばらくしてから、
朝起きるとカップの位置が動いていたり、
玄関の靴がバラバラになることがありました。
まずいと思いつつ、
カップがどこにあろうと、
割られなければ困らない。
部屋のいる存在を特に気にせず生活をしているうちに、
だんだん悪戯が頻発するようになりました。
カーペットがめくれる、
いつのまにかリモコンが箪笥の中にある、等。
子供かお前は、
などとつっこみを入れたくなるような
可愛いものばかり。
僕はなめていました。
ある日の晩、
レポートをまとめ終わった僕はベッドに入りました。
ぐーすか眠る夢の中、
僕は電車の夢を見ました。
車掌さんがやってきます。
「切符を拝見しまーす」
カチッ。
夢で、切符を切る
歯切れのよい音が鳴り続けていました。
目が覚めると、もう朝でした。
寝ぼけ眼で部屋を見回すと、思わず叫びました。
部屋を解約したのは、その日の昼でした。
それは、もう僕には
とうてい悪戯でかたづけられない事件だったのです。
僕が眠る枕の端を、
びっしりとホチキスでとめられていたのですから。