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部屋にあった小窓

2019/03/17

私が小1だった頃の話。
うちはいわゆるシングルマザーの家庭で、
福岡市博多区の公団のマンションに住んでました。
結構広く部屋数も多くて、
私は自室を持ってたんだけど、
部屋にはベランダがなくて小窓があった。
大人の胸ぐらいの高さだったと思う。
バカで夢見がちな私は、
その窓から外を眺めたら楽しいだろうなーって思ってた。
アニメとかにある、
走ってる車から顔をだして周りを見渡すみたいなのに憧れてたし。
もちろん母はそれを見越して鍵を掛けてたし、
私はクラスでいちばん背が低かったから、
学習机とセットで買った椅子に立って、
閉まってる窓から外を覗く程度だった。
ちょっと鍵にも触ったけど、
ガチャつくだけで開く気配はなかったし。
だけど、ある日曜日の昼、触ったら鍵が開いた。
今までのガチャガチャの積み重ねで鍵があいたんだろう。
それで憧れていたとおり、窓を開けて身を乗り出してみた。
最初はすげーって思ってたけど、数分で飽きた気がする。
11階建ての10階だったんだけど、
真下は駐車場と駐輪場の屋根しかないし、
周りも見慣れたマンションばかりだったし。
それで身体を戻そうとしたら、
踏み台にしてた椅子がぐりーんって滑って離れてしまって、
さらにその椅子を蹴っちゃったみたいで身体ががくんと外に押し出された。
ウエストの下の腰骨に、
硬い窓枠が服越しに引っかかったのを覚えてる。
リビングにいる母に助けを求めなきゃ!って思ったけど、
声を出すためにお腹に力を入れたら重心が外に傾きそうだった。
建物の内側にある下半身で壁を蹴れば気づくかも、
と思ったけど、同じく落ちてしまいそうで怖かった。
それで、爪で窓際をカリカリしてた。
音が伝わるといいな、と思って。
落ちたらどうなるかみたいなの想像して怖いし、
我慢してたけど泣きそうになった。
子供によくあると思うんだけど、
しゃくり上げる泣き方の子供だったから、
我慢しようとしても腹筋にぴくんぴくん力が入り始めた。
重心がぐらっぐらってし始めて、
落ちちゃうから止めたいのに、どんどんひどくなった。
もうだめかもってところで、
後ろでガタンって凄い音がして、
母が私の部屋に入ってきた。
落ちそうになってる私を見つけて、
後ろから抱えながら部屋に引っ張りこんだ。
ここまでだと、危機一髪ってだけの話なんだけど。
最近帰省したときに、母にその話をしたんだ。
「でも私の執念ってすごくない?
日々の積み重ねで鍵壊すとかwおばかww」
「あぁ…あれね、壊れてなかったのよ」
「…は?うそー?」
「怖がらせると思って言わなかったけどね。
あの後、窓を一旦締めて、
確認のために鍵を開けようとしたんだけど、開かなかったの」
とか言い出した。
それが自分的に怖かった。
で、その時の同級生にその話をしたんだよ。
母の話含めて。
そしたら同級生は、私以上に怖がってた。
うちのマンションの上の部屋、自殺が2回もあったらしい。
全然知らなかった。

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