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先客

2019/03/11

命に関わる職場いじめに遭い、
同時に自分の人格全てを否定された私は、
自殺を決行しました。
遺書と遺言(保険証書の置き場や貯金の渡り手等)を財布に入れ、
セキュリティの甘い古いマンション(賠償金が安いかと思った)の
最上階の通路にいました。
酒と睡眠導入剤のおかげでラリって変なテンションで
「さぁ飛ぶぞ!」
と身体を乗り出した時、
ふと下を見たら…いました。
先客。
でもおかしいのです。
今の私と同じ髪形。同じ服。
今私が着ている服は、非売品なのです。
同じ服を着ている人などいるはずがありません。
「あの世」という新天地を求めて飛ぼうとする、
高揚した気持ちが一気に冷めました。
「先客?誰?ってか何かおかしい!」
と思いながら、下をよく見ました。
死体は有り得ない方向に足を曲げ、
背中から背骨を飛び出し、頭からは脳が出て…
とにかく「醜い」状態でした。
血生臭い匂いと、
何か焦げた様な匂いもしました。
下の匂いが届く筈もないのに。
「アレは数分後の私だ!」
と気付き、
「あんな姿になるならやめよ…」
と自宅に帰りました。
帰ったら母が
「お帰り。間に合ったね。」
と言いながら頭をなでてくれました。
最後。
母は何か知っている様子でしたが
何も語りませんでした。
その後、職場イジメは
急激に軽度化すると同時に私の仕事が認められ、
味方や友達も出来、円満退職しました。
今でも、私が飛び降りるより先に死体になっていた
「私」の正体はわかりません。
ですが、
「早まって自殺した私」
の姿を見たおかげで今も私は生きていられます。

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