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個性の強い女の子

2019/03/04

出会い系で知り合った女を
一人暮らしの部屋に持ち帰ったまでは良かったが、
どうやら精神的に病んでるご様子。
その子は病院から処方された薬を飲んだ後、
ろれつの回らない口調で
「私は21じゃなくて本当は17なの」
「中国で生まれ、死んだ姉の代わりに育てられた。
だから名前も姉のものを継がされてる」
「中国ではストリートチルドレンをしていた」
「シャバより病院生活の方が永い」
「巫女だ」
「芸者だ」
と訳の分からない話しを延々しだした。
平静を装いつつも
「怖いよ~」
とガクブルってる俺に
「この部屋、前にカップルが同棲してたんちゃいます?」
とその子は言った。
確かにそう。
引っ越してしばらく
名字の違う男女宛の郵便物が度々届いてた。
わざと
「え?」
と聞き返すと
「心中してはりますわぁ~」
(巫女の話題の後からずっと京都弁)
と。
その子曰く心中はこの部屋ではしていないらしい。
その後も、出会って数時間では分からないような
俺の身内に関する事を言い当て、
俺の恐怖はMAXに達しようとしていた。
しかし追い討ちをかけるようにその子は
「隣りの部屋、出るで」
と断言した。
・・・何故知ってる?
俺がこの部屋に来て1年目で
4回入居者が変わった。
その後丸一年ずっと空き部屋のまま。
気持ち悪いのが、
4組目が出た後すぐに老夫婦の会話が早朝聞こえていた。
俺は、引っ越して来た雰囲気も無かったので
多少驚きつつも
「今度は朝の早いジジババが越して来たか。嫌やな~」
と思っていた。
だが、その声はたった一回のみ。
生活音もなければ、引っ越して行った物音もなし。
その子は
「隣りには、若い女が体育座りで頭を抱えたまま、呼んでいる。
自分の存在に気付いてくれる人を。」
とつづけた。
一年程前までいた彼女は、
おばあさんが霊能者で、本人も多少ながら霊感あり。
その彼女がしょっちゅう俺の部屋と、
隣りの部屋を間違えて立ち止まる。
その事を話してみると
「彼女が間違えようのない隣りの部屋で
思わず立ち止まってしまうのは、
呼ばれてる念に引き寄せられてるだけの事」
と説明した。
病んでるだけなら相手にしないが、
支離滅裂な話しの端々が符合していたり、
身の回りの事を言い当てたり…。
もちろん性欲なんてわくわけもなし。
「えらい、女つかまえてもうた」
と後悔しつつ、その子を寝かせる事にした。
俺はパジャマ代わりにとTシャツを渡した。
で、驚いて声を失った。
着替えたその子の両腕にびっしり
リストカットと縫合した跡が。
皮膚は度重なるリストカットで蛇腹状になっている。
その子は驚く俺に、三白眼気味の目で見つめ、
口元に笑いを携えながら
今度は自殺の話しをし始めた…。

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