最後まで聞いて
2019/02/21
中学のころの話なんだが
夜中、肝試しに行こうということになった。
場所は近くの中学校。
まあ山奥なんで、
セコムさんとか付いてない学校なのさ。
いってみたら、建物に足場とか組まれてて、
夏休み中に校舎を改築するとかで、
工事中の看板が立ってた。
んで3人で侵入したら、
ピアノの音が聞こえてくんのよ。
音楽室にピアノがあったから、
そこかなって思い、侵入。
音楽室も改築らしく、
なにやら工事道具とか置かれてる。
恐る恐る入ってみると、誰かがピアノ弾いてた。
「おい、あれ原田じゃね?」
となりの柏木が言った。
転校生の原田っていう、女の子だった。
吹奏楽部に所属してたんだが、背は小さくて
あんまり存在感がない奴だったんだが、
ピアノが上手くて、休み時間には音楽室でよく弾いてた。
なんか他の女子からイジメられてるとか噂があった。
ピアノを弾きながら、原田は首をこっちに向けた。
何かブツブツ言ってたんだが、
よくみるとピアノの蓋が閉まってる。
原田の手は、その蓋に食い込むように挟まってた。
その間中、ずっとピアノの音は鳴ってるのよ。
んで蓋が曲に合わせて小刻みに上下してる。
けっこう重いんだよね、あれ。
おれら、そのまま動けずに見てたら、原田が
「最後まで聞いてね。そしたら死んであげる」
笑顔だった。
即効で逃げた。
夏休み始まった始業式の日、
原田は学校来なくなった。
先生は転校と言ってたが、
ほんとはどうだか分かんない。
ほんとに転校だったのか・・・
音楽室は1ヶ月使えなかったが、
また改装工事が行われて使えるようになった。
新しいピアノには蓋がなかったけど。
なんだったんだろう。