生け贄
2019/02/19
話の出所はちょっとぼかしてしかかけないけど信じる信じないは自由です。
某県にすんでいるのだが、自称やんごとなき血族の友人がいた。すでに鬼籍にはいってしまったのだが、実に信じがたい話なのだが聞いてほしい。
自称やんごとき血族の友人Aとは幼稚園のころからの付き合いだった。地元でも名士でかなりの土地とかなりの資産をもっている友人Aは長男で、ゆくゆくはその家を継ぐだろうと思っていた。
高校2年の夏に進学のことや将来のことで色々と話す機会があった。友人Aはにこにこ笑いながら「俺の将来はきまってるから・・」
あまり裕福でない私はまぁ正直家が金持ちでいいなぁと思っていた。今から思えば地元の名士であるはずの長男が普通の中学、高校に通って自由に遊んでいたのも友人Aの末路がわかっていたので親や親族が自由にさせていたのだろうと思う。
高校3年の夏すぎから友人Aの様子があからさまにおかしくなっていった。自暴自棄というか、何もかもどうでもいいような発言と行動が目に見えて多くなっていた。
受験のノイローゼか年齢的におこる不安定だと思っていたが実はそうではなかった。卒業して見事に私は浪人になり、ぶらぶらろくでもない生活を送っていた。
友人Aとは何ヶ月か連絡を取っていなかったが、クリスマス前に突然友人Aから連絡がありひさしぶりに会うことになった。何ヶ月ぶりかにあった友人Aの姿は異様というか異常というか、髪は白髪まじりで、頬骨がういて見えるくらいげっそりとやせていた。
たった数ヶ月で人間の容姿がここまで変わるものかとひどく驚いたのをいまでも覚えている。近所の公園で寒い風の吹く中暖かいコーヒーをすすりながら・・・。
私「おー、ひさしぶり卒業式以来なにかあったの?」
友人A「ちょっと話を聞いてほしくてな。なにも聞かないで俺の話をきいてくれ」
私「・・・病気かなにかか?」
友人Aのあまりに変わり果ててやせ細った姿を異様におもった私は自然ときいていた。
友人A「・・・いや、ちがう・・が関係はある。この話はお前にしかいわない」
そういうと友人Aは左手でコートをちらっとめくった。友人Aの右肩から先にあるはずの右腕が見当たらなかった。あまりの衝撃と予想もしなかった状況に言葉を失っていたら、友人Aがぽつりぽつりとある物語を話しだした。
とある公家の当主が、大きく変わる世の中と自らの家系が絶えてしまうのを恐れ、ある神社の神主に相談をした。その神社の神主は、当主の相談に3つの条件を承諾すれば未来永劫、家系と田畑が守れると言った。
その条件とは、
1神主の娘を娶り神主の血筋も絶やさない
2代替わりごとに贄を差し出すこと
3ある箱を守り続け、その代の当主がその度作り直すこと
そういうとその神社の神主は、その当主に娘をわたし、ある箱をわたすと自らの命を絶った。ほんとはもっと細かく長かったが要約しました。そういう物語だった。
クリスマスの時期のくそ寒い公園で聞かされて気持ちのいい話ではなかった。
私「・・その話はなにか意味があるのか?」
友人A「・・・代わり事の贄は長男、つまり俺・・・・」
私「何だそれ・・お前の腕とかいきなり変な話とか・・」
友人A「・・まぁきいてくれ。俺は来年の夏までに死ぬ・・」
友人A「・・ただ誰かに話を聞いてもらいたかったんだ」
私「その腕とはどうした?そのやせ方は異常だぞ。病院にいけ」
友人A「腕は・・腐って落ちた。食っても食ってもどんどんやせていくんだよ」
言葉につまっていると、友人Aは「死にたくない。つらい。助けてくれ」と2時間以上泣き喚いた。そうこうしているうちに友人Aが「ありがとう」といって深く頭をさげて帰っていった。
あのまま連絡がなくこちらから連絡がつかないまま友人Aの訃報を受けた。葬儀にあつまってきた学校の友人たちから事故死と聞いた。
友人Aの父親と母親がよくやったと泣いていたのがいまだに耳からはなれない。