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“出る”フロア

2019/02/12

昔働いてたホテルでの話し。
都心にある結構でかいホテルだったんだけど、
いわゆる“出る”フロアがあった。
霊感なんで全然ないし、
信じてもいない俺は普通に働いてたんだけど、あるとき、
お客さんをそのフロアの客室に案内すると
「この部屋は、いえ、このフロアはやめて下さい」
とのこと。
結局、部屋は変更したんだけど、
その客さんは霊感が強いらしく、
「ホテルに入ったときは何も感じなかったけど、
エレベーターを降りてそのフロアに入ったときから、
嫌な感じがした。
部屋の前まで来たらもう耐えられなかった。
よく普通に働けますね」
と言っていた。
満室ともなれば1000人以上泊まれるホテルなので、
宿泊中に病気や怪我をする人もいなくはない。
あるときモーニングコールを何度鳴らしても、
おきてこない客がいるという。
部屋まで行き、チャイムを鳴らしても無反応。
マスターキーでドアを開けても、
チェーンがかかっていて入れない。
声をかけても反応がないので、
警備員を呼び、チェーンを切って部屋に侵入すると、
ベッドの上で寝ているお客さん。
しかし、肩を揺すっても、反応はなし。
お亡くなりになっていたようだ。
後から確認すると、まさに、
“出る”フロアの上記の客に嫌がられた部屋だった。
警察に届け、事の顛末を話し、
仕事が終わると、支配人から「昼飯を食おう」とのお誘い。
支配人からは、
この話を口外しないことように、
とのことだった。
自分が
「あの部屋は何かあるんですか?
以前、あの部屋に案内したお客さんから、
部屋の変更を強く求められたこともあります」
と、訊くと、支配人は
「自分もまだここに来てないころの話だから、
詳しくは知らないが、ホテルができた直後のころに、
あの部屋に泊まっていた客が、突然発狂して自殺したらしい。
お払いしたり、お札を貼ったりしてるけど、
あのフロアは急病とか怪我のトラブルは他より多い。
今回みたいなのは初めてだが・・・。」
そのフロアでの宿泊で
部屋の変更を求める客は結構多く、
また、隣の部屋に宿泊した客から、
隣がうるさいからなんとかしてくれ、
とのクレームを受けたが、
その部屋には誰もいない、
ということも何度かあるそうだ。
その後の話は噂でしか知らないが、
そのフロアで死んだお客さんの死因は
結局わからなかったらしい。
また、自分が辞めるころ、
各フロアを順番に内装のリニューアルを行ったが、
そのフロアは最後の最後まで手をつけていなかった。
もうなくなってしまったホテルなので、
時効かなと思い書いて見ました。

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