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呪いのDVD

2019/01/17

ある日、大学に通っていた彼女が言った。
「あや子(彼女の友達。名前は仮)
ねぇ、いまダイエットしてんだって」
彼女の友達(あや子)は、
エクササイズでダイエットにはまっているらしい。
「で、うまくいってるの?」
「うん、それがね・・・」
体重も体型もいまだに変化ないという。
その代わり・・・
「最近何も食べてないみたい。
この前会ったら、なんだか上の空で・・・
目の焦点が合ってないのよ。ちょっと心配。」
3日後、あや子ちゃんの母親が
実家で亡くなったという。
あや子ちゃんの家庭は、
母子家庭で母と弟は
遠く離れた実家に住んでいた。
母親の遺体には、
脳がなかったという。
医者もはっきりした死因はわからず、
直接的な原因は、
やはり頭蓋骨のなかに脳組織がなかったことだという。
頭蓋骨に異常はなく
脳を取り出したような穴なども、
見当たらなかった。
その一週間後、
あや子ちゃんの弟も亡くなった。
同じように脳がなかった。
あや子ちゃん親子たちは
大変仲がいいと評判だった。
「あたしね、あや子に関係あると思うの。
ねぇ、一緒にあや子の部屋に来てくれない?」
そう言われてあまり乗り気がしなかった。
彼女はちょっとおせっかいなうえ、
関わることといったら、
決まって呪いとか心霊とかそういうたぐいなのだ。
彼女はそういうのに詳しいし、
何度か友達を助けてきた。
たぶん今回のも呪いか何かだと踏んだのだろう。
心細いので、
タケシ(おれの友達、仮)を呼んで
一緒にあや子ちゃんの部屋に行った。
あや子ちゃんは確かに、
目が死んだようだった。
無理もない、
愛する家族が立て続けに死んだのだ。
部屋に入ると、
テレビにエクササイズをしている
男女の映像が映っていた。
通販DVDで、
それを見ながらエクササイズをすると痩せる、
といったものだった。
通販ものに珍しく、
たいていそういうのは外国人が映っているものだが、
アジア系の男女が踊っていた。
その映像をみたとたん、
彼女が叫んだ。
「ちょっと!あや子!なんなのよコレ!?」
彼女の動揺は半端じゃなかった。
DVDをデッキから取り出し、
みんなの目の前でディスクを割ってしまった。
「おい!何すんだよ!」
そのあと彼女を何とか落ち着かせて、話を聞くと、
あのエクササイズはある儀式の踊りなのだという。
彼女は言った。
「・・・話だけでは知ってたんだけど、初めて見たわ。
あれって、言ってみれば呪いのたぐいなのよ。
映像で床に大きな丸とマークがあったでしょ?
アレ、魔方陣みたいなものなの。
人を呪い殺すものなの。
しかも自分が一番大切に思っている人を・・・。
コレ、危険よ。」
あや子ちゃんは、
知らずにDVDを購入し、
知らずに呪いを行わされていたわけだ。
しかも、呪う対象は、
愛する自分の母と弟・・・。
「は“あぁぁぁぁぁぁっっつつつ!」
あや子ちゃんが突然絶叫し、
泡を吹いてその場に倒れた。
病院に運ばれたが、
即死だった。
遺体解剖の結果、
彼女の胃と腸からヒトの脳組織が発見された。
~後日談~
あのDVDを見つけた。
しかも、彼女の棚から。
ジャケットは違うものに変えられていて、
簡単に見つからないようになっていた。
おれは彼女に問い詰めた。
「なんでお前が持ってんだよ!?」
「最近はじめたの。ダイエット。
DVD、買っちゃった。」
映像は、
踊っている人物と床のマークが違うものの、
踊りはほとんど同じだった。
「コレ、お前が危険だって言ってたやつじゃんか!」
「え、そう?気づかなかった・・・」
彼女は少し上の空だった。
ソワソワしだし、
嘘をついているとわかった。
「お前・・・まさかコレ見て踊ってないよな・・・?」
なぜ彼女が持っているのか、
いったい何のDVDなのか、
しつこく問い詰めると、彼女は言った。
「怒らないでね・・・
ここにあるのは違うやつなの。
あや子のとは違って、
自分が嫌いになった人間を呪い殺すものなの。」
とつぜん携帯が鳴った。
おれの携帯だ。
「おい!大変だ。」
友達からだ。
「タケシが死んだ!
あんなに昨日まで元気だったのに!」
頭が・・・白くなった。
彼女がうつむいて言った。
「ごめんね、黙ってたけど、
タケシくんと浮気してた。
でも、あたしは遊びだったのに
あいつったらしつこくてさ。
嫌いなのよ、しつこい人って。」
「お前・・・まさかタケシを」
「う、ごめん・・・」
彼女は手で口を押さえながら、
小さくゲップをした。
臭いが漂ってくる。
胃から臭う異様な、
腐ったようなニオイ。
「あたしを許して。許して。
・・・ちゃんと一番好きなのは、あなただから。」
ふと彼女ごしに、
向こうの机に目がいった。
あや子ちゃんが持っていたDVDのジャケットがある。
一番大切な人間を呪い殺す・・・。
彼女はニッコリと笑った。
目が、焦点が合っていなかった。
これからおれは、
どうすればいいんだろう。

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