蝉
2019/01/09
俺的に洒落にならない怖い話。
幽霊とかじゃないんだけど。
バイクが趣味でお盆休み一杯、
帰省もかねてあちこちをウロウロしてた。
で、休みの最終日の夕方、
また一人暮らしのワンルームマンションに帰ってきた。
一週間、誰一人入る者のいなかった独身男の部屋は、
むわっと蒸し暑い。
クーラーをつけて熱いシャワーを浴びて、
ビールのカンを空けてソファーに座り、
ひといきついたその時。
ジジジジジジジジジジジジジジジジ!
部屋の中に大音量で奇妙な音が鳴り響いた。
音がした方向を見て、
俺は「え!?」と固まった。
白い壁に、蝉、蝉、蝉。
蝉が10匹ほどとまっていた。
そのうちの一匹が、
人の気配を感じてか、急に鳴きだしたのだ。
気持ち悪い。
だが、俺も男だ。
別に、虫が怖いわけでもなし。
どこから入ってきたのだろう?換気扇?
などと思いながら、
壁の蝉の群れに近づいて、ぞっとした。
その蝉の、一匹一匹が、
壁に虫ピンで固定されていた。
鳴いた蝉以外の他の蝉は、
既に死んでおり、すっかり乾燥していた。
とりあえず、警察を呼んだ。
盗られたものなし。
変質者の仕業であろう、と言う結論に。
カギをかけ忘れた小窓から進入した可能性あり、と。
5Fなんだけどね、俺の部屋。
蝉の乾燥の具合の程度が異なることから、
何日にもわたって変質者が
俺の部屋に居座った可能性もある、とのこと。
あらかじめ、死んだ蝉を持ち込んだ可能性もあるけど。
生きた蝉もいたことから、最悪、
その日の朝くらいまで変質者が居た可能性も・・・。
さすがに気持ち悪かったので、冷蔵庫の中のもの、
飲みかけのウィスキーのボトルの中身、全部捨てた。
蝉と虫ピンは、警察が全部持っていった。