何の声?
2018/12/25
これは私が子供の頃の話です。
当時私は地方の田舎に住んでおり周囲に民家も少なく
学校に通うのも片道で50分は歩かなければならない所でした。
途中の道のりは昼間でも薄暗い林の中を歩かなければならず、
その先には古びたアパートが一軒建っていました。
普段から雨戸が閉まっているなど
人が住んでいる気配は無かったのですが、
ある日の帰り道、
普段は人気の無いそのアパートに何人か人が集まり、
なにか話し込んでいるようでした。
アパートが近づくにつれ、皆黒い服を着て、
白と黒の幕が垂れ下がっており、葬式だと気づきました。
家に帰り母にそのことを話すと、
住んでいた80歳近いおばあさんが亡くなったと聞きました。
その話を聞いてからは怖くて、
学校から帰るときはできるだけ早く家に帰るようにしてました。
しかし、ある日、つい友達と放課後遊びすぎてしまい
学校を出たときは6時を過ぎてしまっていました。
帰り道は街灯も少なく、
真っ暗な闇の中を走って帰っていました。
やがて真っ暗な中に黒いアパートが
目に入り全力で走り抜けようとしたときのことです。
変な声がぶつぶつ聞こえてくるのに気づきました。
何の声?と思い耳を傾けると、なにか息苦しそうなかすれた声で
お経のような念仏をとなえていました。
怖くなり、走ってアパートの前を通りすぎようとした時、
アパートの二階の窓が開いており
中から薄暗い明かりが漏れていてふっと、見ると
目を全開に開いた老婆が二階の窓から体を乗り出し
こっちに手を伸ばしていました。