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のっぺらぼうたち

2018/11/03

俺がまだ幼稚園の頃、
まだ祖母ちゃんと寝ていた頃の話。
その夜
俺はいつものように祖母ちゃんの部屋に行き、
そして昔話を聞いてから寝た。
その時はまだ何も変わりなかった。
深夜
俺は何故か目が覚めてしまった。
トイレに行きたいわけでもないのに、
目がさえて眠れない。
その時
祖母ちゃんがうなされる声が聞こえてきた。
俺は気になってそっちを見た。
…誰か立ってる!
祖母ちゃんの布団のまわりを取り囲むように人が立ってた。
それは顔が無く、着物を着ておかっぱ頭で
みんな同じ格好だった。
でも何故だろう?
何か悲しいような感じがした。
顔が無いのに悲しい表情をしているように感じた。
でも同時に怖い顔で笑っているようにも感じた。
俺は怖くなって頭から布団を被り、そのまま朝になった。
明るくなってきて、俺が恐る恐る顔を出すと
「のっぺらぼうたち」はいなくなっていた。
俺はすぐに祖母ちゃんを起こし、
深夜あったことを伝えた。
すると祖母ちゃんはこんな話をしてくれた。
「実はのう、ワシには小さい頃に死んだ妹や弟が何人もおってのう。
あの頃は戦時中でろくに線香もあげてやれんかった。それでのう
こないだ小さな地蔵を立ててのう、お寺さんに戒名をつけてもらって
お経も上げてもらったんじゃ。そうか…お礼を言いに来たか…」
と祖母ちゃんは目を細めた。
俺が祖母ちゃんうなされてたよ?と聞くと
祖母ちゃんは怪訝そうな顔をして
「夕べ、祖父さんの戦死した夢を見てな、
恐ろしい夢じゃった。祖父さんに何もなけりゃいいが…」
と言った。
実は祖父ちゃんはこの時、
風邪をこじらせて入院していた。
俺は何か悪い予感がしていた。
そしてその予感は現実のものとなった。
朝食を取っていると病院から電話がかかってきた。
祖父ちゃんの容態が急変したからすぐに来て欲しい、
とのことだった。
親父達は病院に行ったが、俺は幼稚園に行かされた。
そして祖父ちゃんはそのまま死んだ。
俺は悲しいよりも怖かった。
怖かったのはあの「のっぺらぼうたち」が何のために出てきたのか
わからなかったから。
祖父ちゃんの死を知らせに来たのだろうか?
ただお礼を言いに来ただけだろうか?
それとも…本当に、祖母ちゃんの弟妹だったんだろうか?
もちろんこれらの謎は解けるはずも無く今に至っている。
ただ実家に帰り墓参りした時に
その地蔵を見ると、
すごく不気味に感じる。
そうだ…
この地蔵の笑い方…
あの「のっぺらぼうたち」に感じた笑みと同じだ…

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