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ドシキタンカエリナセ

2018/10/30

小学校2年の時に、仲の良い友達がいました。
名前は雄一郎くん。
少し知的障害のある子だって事は、
もう少ししてから理解できるようになりました。
当時はそんな事は気にもならず、
雄一郎くんを含めた同じ小学校に通う近所の仲良しグループで、
日が暮れるまで遊んでいました。
雄一郎くんは知らない人と会話をする時に、
ドモって言葉が発せませんでした。
相手と目を合わせる事もできないで、
俯いて小声で何かモゾモゾ話すんです。
雄一郎くんがまともに会話が出来る人間は限られていて、
両親とお兄ちゃん、幼馴染の俺たち仲良しグループの4人。
俺が知る限りでは、この程度のものだったと思います。
雄一郎くんのお父さんは建築会社を経営していて、
結構裕福な家庭だったイメージがあります。
少なくとも、地方公務員の父を持つ俺の家よりは、
贅沢な家に住んでいました。
日曜日のその日は、朝から雄一郎くんの家で遊んでいました。
幼馴染メンバーの内の、
雄一郎くん、俺、Kくん、Mくんの4人だったと思います。
季節は春の終わり頃か初夏だったでしょう。
天気の良いその日はとにかく暑くて、
庭で遊ぶみんなはTシャツ1枚になっていました。
庭もかなり広くて、家庭菜園の畑や柿やビワ?の木とかも生えてて、
隅っこには小さな滑り台やブランコ、砂場みたいなのもありました。
砂場で遊んでいると、
雄一郎くんのお母さんが
「みんなジュース飲まない?」
と、家の中から呼ぶ声が聞こえました。
「はーい!」
みんな喉がカラカラで、ダッシュで家の中に走って行ったんですが、
雄一郎くんだけ、反対方向にトボトボと歩きはじめたんです。
時々ちょっと変わった事をする子だったし、
裏口の別の入口から入ってくるんだろう程度にしか思ってませんでした。
雄一郎くん以外の3人がジュースを飲み始めても、
彼はまだ家に入ってきませんでした。
心配したKくんが、外に雄一郎くんを呼びに行きました。
しばらくしてKくんが戻ってきました。
少し青ざめた顔で、小刻みに震えているようでした。
「どしたん?お腹痛いん?」
俺が聞くと、
K「雄一郎くんおっちゃんとしゃべってたわ・・・」
俺、Mくん「???」
意味が解らんけど、ジュースも飲み終えたし、
とにかく雄一郎くんの所へ行ってみる事にしました。
雄一郎くんは家の玄関とは反対側の、
隣の家との境になっているブロック塀の所に立っていました。
ブロック塀に顔を向けて、独り言を言っているようでした。
雄一郎くんの顔とブロック塀の隙間は10㎝程度。
今にも壁に鼻が付いてしまいそうな位近づいていました。
近くまで行くと、雄一郎くんが誰と話しているのか解りました。
ブロック塀に飾り?というか、
デザインされた穴の空いた部分が等間隔に並んでて、
その小さな隙間から見える、お隣の庭に居るおじさんと会話をしているみたいです。
姿は見えませんが、声が初老の男性っぽかったのです。
雄一郎くんは一生懸命におじさんに話をしています。
話の内容はその時は聞き取れませんでしたが、
知らない人としゃべる時の、普段の雄一郎くんとは別人のように、
ハキハキと大きな声で、塀に向かって話しかけているように思えました。
相手のおじさんは、ただ
「うん・・・うん・・・」
と、タイミングのずれた感じの相槌を打つばかり。
俺とMくんは、雄一郎くんの背後までやってきました。
Kくんは玄関先から動こうとせず、遠巻きに見ていました。
Mくんが、雄一郎くんの頭越しにブロック塀のその穴を覗きました。
Mくん「ん?んん?うあぁっ」
変な声を出して、Mくんが俺の方に倒れ込んで来ました。
俺「なんなん?どしたん?」
Mくんは言葉無く、目は塀の穴を見つめたまますごい速さで後ずさりしています。
あんなに早い速度で人が後ろ歩きする姿を、未だに俺は見た事がありません。
誰が居るんだろう?恐いモノ見たさに、
俺も雄一郎くんの後ろから塀の穴を窺って見ました。
最初は穴の中に、小さな蜘蛛の巣が張っているのが見えました。
そしてその蜘蛛の巣越しに俺が見たものは、
とてもこの世のものとは思えない代物でした。
そもそもその穴から見える風景は、お隣の庭ではありませんでした。
見た事の無い砂利道に、
赤い柱が奥の方までずーーーーーと続いているようにみえました。
その道の真ん中に、青い作業服?よく工事現場とかで
作業員の人たちが来てるような服を着たおじさんが、
俯いて立っているのです。
ズボンのお尻のポケットには、
スパナとかドライバーとかが何本も刺さっていました。
おじさんは下を向いたままでしたので、顔は見えません。
相変わらず
「うん・・・うん・・・」
と、変な相槌を打っています。
雄一郎くんは、俺達が来た事を気にもしない様子で話し続けていました。
で、そこで気が付いたんですけど、その俯いたおじさん、
体勢が明らかに不自然なんですよね。
頭はこちらに向かって俯いてるんです。
ちょうど深々とお辞儀をしたような感じ。
でも、どうみても身体は向こうを向いてるんです。
背中がこちらに向くように。
ズボンのお尻のポケットもハッキリ見えていましたし。
つまり、首がありえない角度に曲がって垂れてるんです。
「うぁあああああああああああああ」
それに気がついて、初めて俺はその塀から飛び退きました。
無意識に雄一郎くんの手を引いて、
KくんとMくんが待つ玄関先までもうダッシュしました。
その時、塀の向こうから小さなおじさんの声で、
「ドシキタンカエリナセ」
と聞こえました。
意味は全く解りませんが、とにかく恐ろしいモノを見てしまいました。
俺は大泣きしていたと思います。
それからはみんな、雄一郎くんの家に遊びに行くのは止めました。
雄一郎くんとは4年生くらいになるまで一緒に遊んでいましたが、
その後疎遠になりました。
その時一緒だったKくんとMくんとは、高校まで同じ学校に通っていましたが、
その話をした事は一度もありませんでした。
俺もその日の事は誰にも話さず、
いつの間にか夢の中の出来事だったんだろうと思うようになっていました。
しかし、去年の正月に高校の同窓会があり、
その時に思い切って二人にあの時の事を話してみました。
二人は目を丸くして、
「あぁ・・やっぱあれ現実だったんだよなぁ・・・」
やはり二人も、同じものを見ていたようでした。
雄一郎くんの所在はつかめません。
当時の家も、今は別の人が住んでいます。
確か会社の経営難で手放したと聞きました。
謎ばかりで良く解らない体験ですみません。
20年越しにそれが現実だったと解って、安心したような恐ろしいような、
なんとも言えない感覚です。

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