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細い髪の毛の束

2018/10/28

私の叔母が五年前のお盆休みの期に体験した実話。
叔母はとある美容に関する病院で働いている。
お盆の時期は一番の稼ぎ時なので休みを取らず働いていた。
夫と離婚し両親と三人暮らし。
しかし両親は墓参りやなんやで何日か家を空け、
その間も母は、夜に帰宅、朝に出勤といった日々を送っていた。
彼女の部屋は床が畳で、角には仏壇、
ふすまの奥に彼女の母(つまり私の祖母)
が使用していた古めかしい由緒ある三面鏡がある完璧な和室だ。
夕方は薄暗くて気味が悪い。
ある夜、叔母は髪留めか何かを捜していた。
何の迷いもなく三面鏡の上や引出しやらを見たりしていて、
三面鏡の前の座椅子の蓋をパッと開けてみた。
するとなんと、長い真っ黒な細い髪の毛の束が
綺麗にとぐろを巻いて置いてあった。
ぎょっとして掴み上げてみると一メートル以上ある。
明らかに付け毛の類ではない。
ハサミでバチっと切ったような切れ方だ。
勿論、叔母も家族も誰もここまで髪を伸ばした者は居ない。
一家全員くせ毛で毛が太いので、家族の誰かである筈はない。
気味が悪くなり、即その毛をゴミ箱の放り込み、床についた。
全く眠る事が出来ず次の日そのまま出勤した。
帰宅し、自分の部屋で肌の手入れをしながら
なんとなくテレビをつけていた。
(昨晩のこともあったので静寂はとにかく避けたかったらしい)
すると、昔の日本の白黒の怪談映画が始まった。
三國連太郎(字わからん)が主役の映画だ。
もの凄く若いなー
なんて思って見ていたらしい。
内容は、妻が居るのにさんざん女遊びをした挙句、
結局妻の元に戻り、その間にとっくに死んでいた妻が
夫に霊となって復讐する、といったものだ。
最後、その妻が自分の長い髪の毛で
夫を絞め殺して話は終わる。
なんとその映画のタイトルは
「 黒 髪 」。
昨晩の出来事と何かしら関連があるのではないか、
偶然だと思いたいけど思えない、
など気が狂いそうな程怖かった、と言う。
家に誰も居なくて独りだった、
お盆の時期だった
というのも怖さを手伝っている。
その後両親が帰って来てから、
例の髪の毛の事に思い当たりはないか
と訊いてみたが、さっぱりだという。
親戚にも訊いてみたらしいが
みな知らない。
勿論私も。
第一、祖母が使っていたのだから
その長い間座椅子を一度も開けない訳がない。
一体いつ誰が髪を入れたのか、
あれは誰の髪の毛なのだろうか。

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