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欠落した記憶

2018/10/17

これは、俺が心療内科に通っていた頃の話だ
その日は、通院の日だった予約時間は11時
病院までは、1時間ほどかかる、そろそろ出かける時間だ
「え~と、コンセントOK、ガスの元栓OK、窓鍵掛けOK、ベッドの下OK」
俺の場合、最低7回これを繰り返さないと出かける事が出来ない
なぜなら、俺は超神経質男だからだ
そんなこんなで時間はかかったが、俺はやっと病院にたどり着くことが出来た
いつもの待合室、予約時間を20分ほど過ぎたあたりで、「岩本さ~ん」俺の番が来た
診察室に入ると、いつもの不機嫌そうな医者がいた
俺はこいつが嫌いだった。
そもそも医者がこんな不機嫌でいいのか?
そうは思っていたが、地元では有名な先生だったので仕方なく俺はこいつの診察を受けていたのだ
しばらくすると
「プルルルルル・・・プルルルル」
電話が鳴った
「ガチャ」
「えっ、分かりました、すぐ行きます」
そう言って電話を切った医者は
「ちょっと、失礼します、すぐ戻りますので」
そう言い残すと、俺を置き去りにして診察室の外へ出で行ってしまった。
一人取り残された俺は、する事もなくなんとなしに部屋の中を観察していた
診察室には、机と椅子そしてベッドが置いてあった
「んっ、ベッド?」
その瞬間、なぜだか俺の視線はベッドで止まった
そういえば、いつの頃からか俺は出かける前、必ずベッドの下を気にするようになっていた
いつからだ、なんでベッドの下なんか見るようになったんだっけ?
そんな事を考え始めてしまった超神経質な俺は、なんだか妙な頭痛に襲われ医者の帰りを待たず、病院を後にしていた
ふと時計を見ると、時計の針は19時を指していた・・・
「えっ!19時!」
病院を出てから今まで、俺は何をしていたんだろうか?
記憶がなかった・・・
宇宙人に誘拐された?
そんな冗談を考えながら、俺は自分を落ち着かせるのに必死だった
そうだよ、そんな事より、今は、とにかくベッドの下だ
俺は部屋の鍵を開け中に入った
部屋に入ると中は薄暗かった、電気を点けようとスイッチを入れたがその瞬間!
「カチッ!パチン、パチ、プツン!」
一瞬、点いた蛍光灯が音を立てて切れてしまった
「おいっ!マジかよ~、ふざけんなよ」
電気を点けないと見えないレベルではなかったが、この薄暗さはさすがに気味が悪い
かといって、蛍光灯の代わりになるものも見つからず、仕方なく俺はそのままベッドへ向かった
この下だ、そう思ってベッドの下を覗き込もうとした時俺は不思議な感覚に襲われた・・・
俺は不思議な感覚に襲われた・・・
朝出かける前、ベッドの下を覗き込んだ時の映像がリアルに頭に浮かんだ
「んっ!なんだ今のは?」
今まで味わったことのない感覚だった
その時、俺の頭の中に妙な考えが浮かんだ
もしかして、俺はこの下に何かがある事を知っているんじゃないのか?
知っているが、都合の悪い記憶は自分で消去しているんじゃないのか?
そんな恐ろしい考えに、俺の体は震えていた
しかし、ここまで来て見ないわけにはいかない!
勇気を振り絞り俺はベッドの下を覗き込んだ
「うっ!」
瞬間、俺は我が目を疑った!!
そこで俺が目にしたのは・・・
妹だった・・・妹がベッドの下に横たわり・・・俺を見ていた・・・
・・・俺は・・・妹に・・・何をしたんだ・・・

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