ネット上に存在する不思議で怖い話を
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ギボチャン

2018/10/16

これは俺が中学のときに体験した実話。
だからできあがった怖い話みたいなオチとかない。
それにちょっと長くなりそう。
なので、暇な人だけ読んでくれ。
中二の夏休み明け、クラスに転校生が来た。
何かぱっとしないスゲェ地味なコ。
俺らは
「彼女華がないねえ」
と小馬鹿にして、興味をもたなかった。
実際スポーツや勉強に秀でたわけでもなく、類は友を呼ぶっていうか、おとなし目の女子だけに相手にされたようだ。
体育祭が近づいたある日、俺は転校生がブレイクしてるのを目の当たりにした。
昼休み、彼女のまわりに女子か集まっている。
そして、あだ名までつけられていた。
「ギボチャン」
なんと、あの宜保愛子からのものらしい。
彼女タロットカード占いができるらしく、それが良く的中するとのことだった。
タロットカードで背後霊を言い当てるのもおかしな話だが、今考えるに、彼女には霊感があったんだろうね。
そのギボチャン、男子の占いはできないとかいってた。
たぶん個人的な感情が入るからじゃないか、なんて噂してたけど、やっぱ恋愛なんぞ占ってもらいたがる女子が多かった。
それが原因でトラブルが起きたんだけどね。
まあご多分に漏れず、うちの学校にもDQNはいたね。
ツッパリ、不良と呼ばれる人たち。
そういう連中て、結構恋愛はお盛んでしょ。
恋愛ていうより、男盗った盗られたみたいな感じだけど。ギボチャンはそれに巻き込まれたみたいだった。
イケメン、ヤリチンヤンキーが二股かけてたらしく、片方の女Aがどっちが本命か占ってもらったそうだ。
するとギボチャン、ビビッて占い、というか霊視中に黙り込んでしまったらしい。
「どうなんだよう」
切れたA相手に、目を閉じて固まるギボチャン。
周りの仲間も
「言ってあげなよ」
とか
「マジつらいんだよ」
みたいな感じでヒートアップ。
ギボチャンの本当の友達(地味な人々)は遠巻きに見守るばかり。
俺も他の男子もドキドキしながら野次馬してた。
集団ヒステリーが頂点に達した時、Aが椅子を蹴って、ギボチャンの髪をわしづかみ。
そのまま壁にゴンゴン叩きつけた。
さすがにみんなで止めさせたが、ちょっと普通じゃなかったね。
ちなみにAは隣のクラスで、当時の俺のタイプだったりしたけど。
騒ぎを聞きつけて担任や先生たちがやってきて、その場はなんとか収拾した。
それから双方の親が呼び出され、何かあったらしいが、ギボチャンしばらく学校休んだ。
一日だけ来たが、何かずっと怯えた感じで、午前中早退した。
それから姿を見せない。
こりゃ登校拒否か?みたいな噂が流れる頃、俺の友人がギボチャンの真相を伝えてきた。
ここだけの話とか言いながら、みんなほとんど知ってたみたいだが・・・
「どうもA(暴れた女子)に霊が取り付いてて、ギボチャンそれが怖いみたいな」
「ギボチャンにだけはっきり見える霊なんだけど、顔が火傷でグチャグチャ。鼻と口の原形がなくて、真っ黒な皮膚に目だけ真っ赤だそうだ。髪の毛もなくて」
そういうのが校舎をうろうろ彷徨っているらしい。(Aも最近授業中廊下でぶらぶらしてんなあ、金髪で)
俺はギボチャンよりAのことが気になってた。
中一の時同じクラスで、ちょっとやんちゃだったが、可愛くて人気もあった。
それが今や完全なヤンキー。
化粧してるAに萌えたりもしてたんだが、何か荒れ狂ってる感じだった。
そう思ってるのは俺だけじゃなくて、Aの荒廃ぶりを霊の所為だと言い出す奴もいた。
ギボチャンの話から、顔に大火傷を負って死んだ生徒が焦点になった。
でも、そんな話誰も聞いたことがないと言う。
先生も一部熱心な生徒の意を受けて調べたらしいが、分からなかった。
「十五年以上前の話だったら、それ以上勤続してる先生はいないからなあ。ああ、用務員のBさんなら心当たりがあるかもしらん」
放課後、一部の熱心な生徒(俺の友人)は一人でBさんの元を訪ねた。
「顔を火傷した女子生徒の幽霊?いや知らないねえ」
ちょっと顔色が変わったBさんに、友人は必死に食いついた。
「その幽霊に取り付かれてる友達がいるんです。お払いとかしたら助かるかもしれない」
友人の真摯な態度に、Bさんは打たれたらしい。
「ここだけの話。誰にも言っちゃいかんぞ」
二十年近く前、うちの学校で校内暴力の嵐が吹き荒れた。
ある不良グループは特に素行が悪く、何度か警察沙汰も起こしていた。
その連中が、冬のある寒い夜、街の自動車整備工場に忍び込み、シンナー遊びをやったそうだ。
焼却用ドラム缶に火をつけ、暖を取りながらのことだった。
しばらくすると、ドラム缶の火が消えかけてきた。
すると寒さに耐えられなくなったヤンキーの一人が、らりったまま近くにあったガソリンか何かを投げ入れた。
ぱっと炎が燃え上がり、ドラム缶近くにいた女の子がそれに呑まれた。
回し吸いしていたビニール袋は一瞬に引火し、彼女の頭は炎に包まれた。
仲間が焦って火を消そうとしたが、熱で溶けたビニールは顔にこびりつき、消火に手間取った。
「多分そのコだろう。事故扱いで事件にならなかったが、ガソリンを投げ込んだのは、そのコの彼氏だったという話だ」
「で、その女の子はどうなったんですか」
友人が尋ねると、Bさんはぽつりと一言。
「さあ?どうなったのかねえ」
その後どうなったかは、Bさんの言葉どおりである。
火傷を負った女子生徒の名前は分からない。
俺と友人が行った自動車整備工場は大型パチンコ店となっていて、その跡地すらはっきりしない。
ギボチャンはいつの間にか転校していた。
Aは卒業式を待たず、街のチンピラと家出した。
友人はその翌年のバレンタインに、ギボチャンの友達からチョコをもらった。
オチとかないのだが、確かにAが荒れ始めた前後、パチンコ店がオープンした。
そして、そのパチンコ店で、俺は一度も勝ったことがない。

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