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みちかさん番外編

2018/10/08

僕には霊能者もどき?の親戚がいる。
通称「みちかさん」。
今現在北海道在住である。
今度の話は、どちらかというと僕の体験談である。
大学を卒業して就職した後、いろいろあって会社を辞め、僕は北海道のA市に住んでいた。
みちかさんは、たまたま用事でA市の近くまで来たので、隣の市で一緒にお茶をしようということになった。
時期は冬。その時の彼女の用事は、ある一家をみることだったが、その話は別の機会にしよう。
その話を聞いていた時、みちかさんが、
「アレ・・・。」
っとあごで外を見るように促した。
見ると向こうの通りに高校生くらいの白人が歩いていた。
「なんなのかなあの子。やばいかも。」
全然やばくない。
ただ横断歩道を渡っているだけだ。
「白人の子が珍しいんですか?」
札幌や海沿いの都市などを除けば北海道には確かに外人は少ない。
「そうじゃないって。確かに珍しいけどさ。ちらっとしか見えなかったけどね。あの子やばいもんが憑いてる。」
やばいもの?まさか、白人にも?
宗教も違うだろうし、いくらなんでも。
僕は彼女の発言が信じられなかった。
「何その顔?疑っている?」
「いえ、別に。」
「あんた英語少しできるよね?今度会ったら、話しかけてごらんあの子に。」
は?僕はますます疑念を抱いた。
白人というだけで英語が通じるわけではない。
ロシア語なんてしゃべれないし。
「話すチャンスなんて無いでしょう。僕はそんなにこの市に来ないし。英語も通じるかもわからないし。」
「そうね。」
と彼女は少し笑って、
「でも・・多分また会うよ、あんたは。」
とみちかさんは妙な事を言うのだった。
そんな話をすっかり忘れていた頃、たまたまちょっと必要な本を隣の市まで買いに行った時、彼がいた。
さすがみちかさん。
胡散臭いだけのことはある。
彼は本を探しているようだった。
みちかさんに言われたのもあり、オージーかアメリカ人ぽかったので最初は英語で声をかけてみた。
「Hello? Is there anything I can do for you?」
「Oh, Yes! I'm jsut looking for some books on Japanese religion.」
僕もわからないので店員に聞くと
「そこですよ。」
と教えてくれた。
そしたら、日本語で
「あ、そこか。どうも!」
と日本語を喋った。
驚いた僕は、日本語でいろいろ聞いてみた。
彼はChris(仮名)と言い、アメリカのU州出身でキリスト教系のXXXX教の布教活動で日本に来ているとのこと。
彼は僕にお礼を言って足早に去っていった。
特にあやしい感じはしなかった。
彼の手の甲に無数の引っかき傷があったこと以外は。
2回目に見たのは、A市からちょっと離れた森の近くだった。
僕は雪のせいでゆっくりと車を走らせていた。
彼は何やらビニール袋を手に持っていた。
彼とは反対側の方向で走っていたが、目があったので、軽く右手をあげて挨拶した。
ところが、彼は微笑みもせずジッとこちらを睨んでいた。理由はわからなかった。
3回目に見たのはA市の横断歩道だった。
そのときはちょっと話した。
前回のことを聞こうと思ったが、
「一度教会の方に来ませんか?」
といきなり尋ねてきた。
僕は宗教関係に一切興味はないので断ったところ、
「じゃあ個人的にでも。」
というので、
「今度ね。」
と家の電話番号を教えておいた。
紙を受け取ると「See you again!」と別れを告げたが、目はまったく笑っていなかったのを覚えている。
彼の約束など別にどうでもよかったが、しばらくすると、家に電話がかかってきた。
「もしもし?」
「あ、XXさんですか?私、Anna(仮名)と言います。Chrisさんに電話番号を教えてもらいました。是非一度教会に来ませんか?英会話教室もやってますし。」
「えっ、Annaさんって?Chrisはどうしたの?」
「彼はアメリカに帰りました。」
「???何で?」
彼女は理由を言わなかった。
彼女の電話の様子から、僕にかけたのはただの布教活動の一環のようだった。
気になるので教会に一度顔を出した。
そこには、Annaさんともう一人の若い白人、日本人の神父さんだか牧師さん、
あとは日本人の信者の人たちがいた。
適当にお祈りや英会話教室をやり過ごした後、僕は日本人の神父さんだか牧師さんだかにChrisのことを聞いたが、
「アメリカが恋しくなった」
と言う。
僕は彼の態度に疑問持ったので、帰り際Annaさんに問い詰めた。
「Chrisは何で帰ったの?ホームシックじゃないでしょ?」
彼女は最初躊躇したうおだったが、小声で答えてくれた。
だが返答は英語で返したきた。
「彼は狂ってるわ。私達、彼とうまくやっていけなかった。2週間前の夜、私は教会に忘れ物をしたから取りに行った。そしたら、どこかで猫が激しく泣いている。裏庭にいったら、猫の首を絞めている彼を発見して、『一体何やってるの!?』と聞いたの。」
「そしたら彼、『こうするのが一番いい方法なんだ。僕にとっても、やつらにとってもね。』って言うの。あの青白い顔でね。後でわかったんだけど、もう何十匹も殺してたみたい。裏庭に猫の死体とか骨とかが一杯埋まってたから。」
「私はとても怖くなって逃げた。すぐ教会のWさんに電話したの。『Chrisが裏庭で猫を殺してたっ!』って。」
そして一週間後、彼はアメリカに帰されたらしい。
懺悔するよう促されたが、彼は頑なに拒絶したそうだ。
Annaは最後にこう話した。
「私はChrisに聞いたわ。何故猫を殺すのかと。彼はこう答えた。
『選択の余地はなかったんだ。やつらが大嫌いだったから。』
猫が嫌いなの?
『猫が嫌い?猫は身代わりだよ。』『俺は敬虔なXXXX教徒だよ?この意味わかるだろ?』『けどそれも時間の問題だったかもな。』」
Annaが語ったChrisの発言。
「This is the best way! For me and 'em!!」
Annaが語った時、最初僕は「'em」が「猫」だと思っていた。
可能性は低いが、もしあれからChrisと個人的に会っていたら・・・。
みちかさんにこの話をすると、
「ほらね。」
と返ってきた。
なにが”ほらね”なのかは聞かなかった。

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