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僧侶

2018/08/31

今じゃ霊感ゼロの俺だけど、小学校4年生の頃だけ立て続けに霊体験をして参ってた。
林業を営んでた叔父は、仲間が切った大木が顔に直撃して亡くなったんだが俺はその瞬間を前日に夢で見てた。
その情景やら大騒ぎする仲間やら、叔父の血だらけの顔がみるみる膨張していく様子やら、救急車に担ぎ込まれる様子やら。
第三者の視点で、まるで空中に目があるように見ていた俺は、ショックと恐怖で泣き叫びながら目が覚めた。
夢かと思って安心したものの、夢では終わらなかった。
この体験を皮切りに不思議な体験が立て続けに起こるんだけど、物理的に外傷をくわえられた話を。
初めて人の死に遭遇して、しかもそれを予知夢で見、親に話しても変な漫画を読むのは禁止だとか言って信じてもらえず参ってた。
あれから多分1ヶ月もしてなかったと思うけど、その間に首吊り自殺の遺体を予知夢で見た場所で発見したり、夜中に自分のおでこに冷たい手首が乗ってたりと変な体験をしてた。
布団で寝ていると夜中に
「ドーーーン!・・・シャリーーン」
の音とともに腹に激痛を感じて飛び起きた。
上半身だけ起こしたものの、激痛に耐え切れずに「うがーっ」と叫んで両手で腹を押さえて再び寝転がった。
何が腹に直撃したんだろうと思って辺りを見回してると、頭上に草履を履いた足が見えた。
こちらに向かって歩いてくる。
そしてそのまま顔を踏みつけられたかと思うと、「ドーーーン」と俺の腹を杖で突いてきた。
杖のてっぺんには金色の輪が何個か付いてて「シャリーン」と鳴った。
再び激痛が走るので手で押さえようとしても体が動かない。
通り過ぎていった足の主を見ようと、視線を俺の足下にやった。
その姿は僧侶で、笠をかぶり黒い袈裟を着てた。
それを確認すると同時に驚いたのは、俺の足下に見たこともない田園風景が広がってたこと。
そして俺はあぜ道に布団を敷いたまま寝てる状態。
足下には通り過ぎて行った僧侶の列が見え、そのずっと先には新幹線の高架か、高速道路が見えた。
頭上を見ると俺の部屋。足下をみると田園風景。
もう何が何やらわけがわからずに腹の痛みを我慢してると、頭上から「ドーン・・シャリーン」の音が聞こえてきた。
まだ列が続いてるようだ・・。
俺はこの不可解な現象に対する恐怖よりも、
「もうこれ以上痛みに耐えられねぇ」
という恐怖のほうが大きく、
「うわーーー!!」
と泣き叫んだのが記憶の最後。
朝、目が覚めるとやはり腹に激痛が。
パジャマをまくって見ると、腹にピンポン玉くらいのアザがいくつも付いてた。
何故か激しく目が回るのと腹の痛みとで、這って下の階に行って親に見せたんだけど、母親の声が物凄く早まわしで全く聞き取れなかった。
テープを早送りしてるような感じだった。
そんな状態なので学校を休み、フラフラと病院に連れて行かれ、検査の結果アバラにヒビが。
医師の質問も、母親の話も
「キュルキュルキュル・・・」
って感じで全く聞き取れずにずっと黙ってたけど、母親は風呂の蛇口で打ったとかなんとか説明したそうだ。
声が早回しで聞こえない現象は夜には良くなったけど、もうわけがわからず、恐怖とストレスでずっと一人で眠れない状態が続いた。
その体験を最後に二度と不思議な体験をすることはなかった。

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