ムラサキ
2018/08/13
厨房の夏休み。
家族でおばあちゃんちに泊まった時のはなし。
俺が目を覚ますと、もう皆は廊下を挟んだ居間で雑談をしている様子。
「俺も~」
って感じで起き上がろうとした瞬間、初体験の金縛り。
起き上がろうと右肩を上げて体をよじった体制のまま、ゴロッと布団の上にうつぶせに固まってしまって・・・。(この後、今日に至るまで、こんな金縛りの入り方は一度もなし。普通は目が覚めた瞬間、そのままあお向けにかたまる。)
で、パニクりながらも必死にあお向けに体を反転させた瞬間、またパニック。
なんと部屋全体がムラサキ色。
丁度、濃い紫のグラサンをかけた時の様なかんじ。
寝る前につけた豆球までムラサキに光ってた。
で、部屋(やっぱり紫のまま)を必死でキョロキョロと目だけで見渡すんだけど、おばけらしきモノは見当たらず、ちょっと冷静になった。
すると、それまで聞こえてた隣室の雑談がとつぜんフッととまった。
と思ったら、
「チーン!」
と仏壇の鐘の音が聞こえて、誰かがとりつかれた様にお経をあげる声が・・・。
おばあちゃんだと思った俺は、
「おばあちゃん!おばあちゃーん!!」
と声の限りに呼ぶのだが、何か発声した瞬間に何処かに声が吸い込まれていくような、不思議な感覚。
気付いてもらえた気配は無く、お経が延々と続くばかり。
再び半パニックになっている俺は、
「とりあえずムラサキをどうにかしなきゃ」
と何故か照明の紐(延長の紐?が付いてて、手を伸ばせば届く距離)を引っ張ろうと懸命に体を起こそうとした。
少しずつだが体を動かせることに気付き、もう少しだ・・と思った瞬間。
お経のこえが突然聞いたこともない男の声に。
しかも、耳を塞ぎたくなるような大声量で。
全身に鳥肌が立つような感覚の直後、どうやら失神。
次に目を覚ますと、部屋は普段通り。
ハッと隣室の方をみると、おばあちゃんが食卓に昼食を並べてるところで、他の家族はテレビに夢中。
飛び起きた俺は、
「さっき部屋がムラサキだった!お経、大声で読んでたおじさん誰!?」
と、まくしたてるが、みんな
「なに寝ぼけちょーだ?」
と相手にしない。
頭に血が昇った俺が更に続けようとすると、視界に入ったテレビ画像に違和感が。
改めてテレビを注視すると、例の航空機事故の中継をやっていました。
なんとなく、
「金縛りの原因はこれか。」
とおもいました。