知らなかったのか
2018/07/28
大学生の男女4人組が夏休みの最後に思い出作りをしようとキャンプをした。
もう9月も終わりに近く、人は全くいなかったため彼らは最高の場所にテントを張ることができた。
以後、この4人をA男、B作、C子、D美と呼ぶ。
バーベキューの準備をし、4人は乾杯した。
あたりも暗くなり彼らは花火をして遊んだ。
しばらくそうして遊んでいると
「ちょっとションベン行ってくらあ」
とB作が言って席を立った。
それから3人で飲んでいたがなかなかB作が帰ってこない。
「あいつ、酔って崖から落ちたんじゃねえの?」
と初めのうちは冗談さえ出ていたが、30分も立つと流石にみんな心配しだした。
「あたしちょっと見てくる」
そう言うとC子は暗闇の中へ走り出した。
10分くらいたっただろうか…
B作も、C子も戻ってこなかった。
いくらなんでもこれはおかしい、と感じたA男はD美に
「俺は今から2人を探しに行く。お前は今から山を下りて警察に知らせろ、いいな?」
と言うと、ライトを片手に森の中に消えていった。
D美は言われた通りにはしなかった。
A男が2人を連れて戻ると信じていたし、何よりも怖かったから。
1時間、2時間…時間は経っても3人は帰ってこない。
この広いキャンプ場に私1人ぼっち…
そう考えただけでとてつもない恐怖が襲ってきた。
ふと、D美はこのキャンプの計画をしていたときのことを思い出した。
3週間前、4人は大学の喫茶店でこの話をしていた。
するとB作がこう言い出した。
「俺らが今回行くキャンプ場、実は隠れ心霊スポットなんだぜ。昔、そこには城があったんだ。だけど、敵国に攻められてな、遂に落城しちゃったんだ。それでその際城にいたやつは皆殺しにされたらしいぜ?な、行く価値ありだろ?」
するとC子が
「知ってる知ってるwあとね…その落城した日にその山に登ると生きて帰れないんだって!!」
と怖い顔で言った。
D美はよくある話だと、その時はたいして気に留めなかったのだった。
「そうよ、みんなして私をからかってるんだわ…絶対そうよ」
そう自分に言い聞かせ、D美は3人を探しに出かけた。
暗い森の中、D美は1人さまよい歩いた。
しかし探せど探せど3人は見つからない。
何時間も歩いたが誰もいない。
だんだんとあの話が真実味を帯びてきた…
D美は山を下りることにした。
ふもとまでは一本道…足取りも次第に速くなった。
だが道を下ったその先は、あのキャンプ場だった…
「何よ…これ」
D美は混乱しながらもまた同じ道を下り始めた。
「こんなのありえないわ、どこかで道を間違えたのよ」
数分後、D美はまた同じキャンプ場に出てしまった。
山は彼女を許さない。
「もうこんな山嫌だ…お願い…早く出して」
D美はもう完全に錯乱していた。
そしてテントの中に戻ると
「これは夢よ…これは夢よ…」
そうブツブツ呟きながら身体を丸め、うずくまった。
ほんとうに静かな夜だった…
次の朝、テントの周りがざわつき始めた。
D美が恐怖に身を強張らせた。
だんだんとざわつきは大きくなっていった。
「おーい、こっちです」
それは人声だった。
「あ~あこりゃひどいな」
何人もいるようだった。
いきなり、テントが開いた。
「ひっ」
とD美は悲鳴を上げたが、次の瞬間には安堵の表情をしていた。
その声の主は警察官だった。
「君、ここで何をしているんだ!?」
D美がテントの外へ出てみると他にも警察の関係者達がいた。
そのうちの1人、刑事と思われる人がD美に近づいてきた。
「女の子がこんなところでなにしてんの?」
D美はまだ恐怖が残っていたのか少ししどろもどろながら昨夜の出来事を説明した。
刑事は話を聞きながら怪訝そうな顔をして
「じゃあ、あれは何だ?」
と言って、顔を上にやった。
視線の先を見たD美は失神した。
3人はテントの、真上の木の枝に首を吊って、自殺していた…
刑事はD美を見やってこう呟いた。
「…何だ、知らなかったのか」