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やばい世界に迷い込む

2018/06/18

私は昔から霊感が強い方でこういう体験には慣れているのですが、それでも時折心底恐怖することがあります。
その中でもいちばん異色で、未だにあれがなんだったのか分からない体験をひとつ。
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4年ほど前のことです。
当時私は大学生に自宅から通っており、駅からの通学には自転車を使っていました。
通学路の道沿い、駅から出てほんの2~3分程度の場所には、駐車場があります。
一応政令指定都市のオフィス街ですので、ビルとビルの間の小さな駐車場だと思ってください。
この駐車場の一角には、何故か小さな朱色の祠のようなものが建てられています。
私は霊感が強いこともありこの手のものには敏感なのですが、それまで幾度となくその前を通っても、特に何も感じるものはありませんでした。
私はサークルに所属していたこともあり、帰宅はいつも外が暗くなってからになるのですがその日は特別に遅く、確か既に日付が変わっていたと思います。
私はいつものように自転車に乗って、自宅へ帰る途中でした。
で、件の駐車場に差し掛かったときです。
ふと見ると、駐車場の砂利の上で柔道の「亀」のような形でうずくまっている男の人がいました。
最初は酔っ払いかなーと思い素通りしたのですが、すぐにやはり本当に病気か何かだったら後味が悪いと思い引き返すことにしました。
駐車場に引き返したとき(とは言ってもほんの10メートル程度ですが)、男の人は先ほど見たのと全く同じポーズでした。
よく見ると、体を前後に小刻みにゆすっているのが分かります。
このとき初めて、私は何か薄気味悪いものを感じました。
しかしそのときも、これが霊的な何かであるなどという考えは全くありませんでした。
男の人が寝ているのではないということが分かったので、私は思い切って
「大丈夫ですか?」
と声をかけてみました。
すると男の人は意外なほどしっかりとした動きで顔を上げました。
その目は黒目勝ちでちゃんと焦点もあっていて、何か安堵感のようなものを覚えた記憶があります。
しかしその口から出た言葉は、
「大丈夫ですから大丈夫ですから大丈夫ですから大丈夫ですから……」
何か必死に訴えているように、大丈夫という言葉を吐く男の人。
そのときです。
ものすごい耳鳴りと圧迫感を感じて顔を上げると、私たちはいつの間にやら白い服を着た人たちに囲まれていました。
はっきり見たのは4~5人くらいですが、実際はもっといたと思います。
その姿は強烈に印象に残っているのに覚えていないというか、上手く説明できないのですが白いという以外は形容できません。
駐車場には砂利が敷き詰めてありますので、囲まれるまで気付かないということは普通ありえません。
私はすぐに、それが人間ではないということに気付きました。
白い人たちは何をするでもなく、私たちと祠を囲むように立っていました。
ひとつ異常なのは、白い人たちは圧倒的な存在感にもかかわらず、私のことはほとんど無視してずっと男の人の方を注視しているんです。
何か分かりませんが、その男の人にものすごい関心を寄せているというのが分かりました。
それでもその圧迫感は尋常ではなく、もし男の人ではなく私に彼らの関心が向けられていたら、私も正気ではいられなかったと思います。
ここで気付いたのですが、いつの間にやら男の人は沈黙していました。
白い人たちから彼の方に目を戻すと、彼は
○| ̄|_
のポーズで顔を伏せ、じっとしていました。
そして「お」と「ご」の中間のような呻き声を奇妙な抑揚をつけてあげはじめました。
「ぉぉおーお”ーお”ーーーー」
声は次第に大きくなったというか、決して叫んでいるわけではないのにすぐ耳元で声を出されているようなそんな感じになり、先ほどからしている耳鳴りとあいまって気分が悪くなりました。
この時点で寒気がぞくぞくとして、私はほとんどパニック状態です。
しかしただひとつ、何故か確実に分かっていたことがあります。
それは今は伏せて見えない男の人の目を、絶対に見てはいけないということです。
今の彼の目は、先ほど見た黒目勝ちの正気の人間の目ではなく、何か全く別のものだということが直感で分かりました。
そして同時に、もうすぐ男の人がその顔を私の方に向けるということが、どうしようもない焦燥感と共に分かっていました。
しかしパニックだったからかどうかは分かりませんが、私は彼から目を背けることができませんでした。
頭の中は、耳鳴りと呻き声がわんわん反響しています。
・・・
次の瞬間覚えているのは、私は何故か自転車の急ブレーキをかけていました。
いつの間にか私は自転車に乗って、全然別の場所にいました。
無我夢中で自転車で逃げたというわけではなく、完全に記憶が途切れているんです。
みると、進路のほんの2メートルほど先には川の淵が口をあけていました。
先ほどのブレーキの感触からして、もしそのままブレーキをかけなければ、全速力で川に落ちていたと思います。
場所は駐車場から通学路に沿ってだいぶ進んだところです。
すぐ横にはいつも私がお参りしているお地蔵様のお堂がありました。
きっとそのお地蔵様が、何かに取り憑かれた私を助けてくれたんだと思います。
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こんなかんじで、未だにあれが何だったのかわけが分かりません。
自転車をこいでいる最中に居眠りしたとか、麻薬中毒者に遭遇したとか、そういうものではないということは断言できます。
ただ、あの白い人が何なのかだけはよく分かりません。
普通の霊とは少し違うものでした。
前述の通り私は心霊体験を結構体験していたりするのですが、こういうタイプに遭遇したのはあとにも先にも初めてです。
その後も何度かあの駐車場の横を通りますが、あれ以来なにもありません。(というかこの心霊体験中も、祠自体には何の霊的なものも感じられませんでした)
ただ私がこの話を人にするとき、よくあのとき感じた白い人の視線というか気配のようなものを全身に感じることがあります。
というか今も背後にびしびし感じてます。
正直あれに見張られているかと思うと、生きた心地がしません。
勘弁してください。

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