真夜中のFax
2018/06/16
毎年家族で旅行をしていたのですが、去年は大学受験を控えていたので、一人家に残りました。
家族が帰ってくる前日、黙々と勉強をこなす私。
部屋はデッキから流れる音楽で満ちていました。
喉が渇いたし、休憩もしたいと思い、キリが良い所で終えました。
壁のアナログ時計を見ると午前2時17分。
今でも克明に覚えています。
デッキのストップボタンを押すと、午前2時ですから、家のなかは静まり返っていました。
部屋にある小型のアナログ時計の秒針が、静まり返った部屋に不気味なほど響きます。
「当たり前だよな」
と口に出して不気味さを払い、下の階にある台所に行こうとしたその時です。
部屋にある子機が
「ピリリリリ」
と4回呼び出し音を出したのです。
夜中の2時ですから、かけてくるのは家族あるいは業者かと思い、出ました。
「はい、○○ですけど」
「……」
「もしもし?」
「……」
無音だったので悪戯だと判断し、子機を乱暴に戻しました。
そして部屋を出ようとドアノブに手をかけようとした瞬間、また子機が鳴りました。
悪戯だと思ったので、今度は放置しました。
4回のコールの後、途切れる音。
すると下の階から
「ガガー…ガガー」
という音がしたので、即座にFaxだったのだとわかりました。
でも
「家族ならFaxじゃなくて電話するし、業者がFax送るか?」
と不審に、というか嫌な予感がしたので立ち止まっていました。
10秒ほど経過したのでしょうか。
長い時間に感じましたが、下から
「ぎしっ、ぎしっ」
という押し殺した足音と軋む床の音。
「びりっ」
という紙がやぶれる音が聞こえました。
そして音が聞こえた後、また聞こえる押し殺した足音。
頭の中は泥棒という2文字でいっぱいになり、とにかく怖くなってドアの前にソファを移動して、とにかく階段を上る音が聞こえないことを祈っていました。
やがて朝が来て、帰ってきた家族。
恐る恐る
「昨日の夜中Fax送った?」
と尋ねたら
「送ってないよ」
と答えました。
それどころか数日前からFax用紙が切れていたのを告げられた時は、背筋が凍る思いでした。
丑三つ時のFaxにはご注意ください。
誰かが破きにくるかもしれません…