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返ってくるノック

2018/06/09

私が小学校低学年の時の話なんだけど、今でもよく覚えてる。
共働きだったりする親が、学校から帰った小学生を預ける・・・って感じの「学童保育」ってものがあった。
私は1年間しか通わなかったんだけど、今でもまだやってるみたい。
その学童保育は土日以外なら夏休みでも冬休みでもやってた。
で、8月の夏休み中、私は学童保育に通ってた。
福祉センターと一体化してる学童保育には図書室やら何やら色々あって毎日行っても飽きなかった。
その日はとても暑かった。
私とAとBとC、計3人で、室内で遊んでいて、かくれんぼをしようってことになった。
鬼はじゃんけんで負けたAということになり、皆散って行った。
福祉センターは三階まであり、そのうち一回の半分が学童保育。
私達はそんなことは構わないで3階にまで隠れた。
私はあまり遠くまで行くと大変だと思い、スタート地点と同じく1階にある図書室に隠れた。
丁度椅子と机の影になる狭い場所で、丁度読みたかった漫画を読んでいた。
漫画を一冊読み終わる頃になっても、Aの声も姿もない。
上の方を探しているのかな、と思い二冊目を読みはじめたその時Aが後ろに立っていた。
私:「あーあ。見つかっちゃったか。」A:「・・・・・」
私:「どうしたの?」A:「○○(私の名前)、ちょっと来て・・・」
私は不思議に思いながらも、Aに着いていくことにした。
行った先は3階だった。
階段を上ったすぐ前に一つ物置のような部屋がある。
非常通路がある為、外から3つの面が見える。
そのうち、2つは大きなガラスがはめ込んである。
中が丸見えなのだ。
Aは私をその部屋のドアの方へ連れて行った。
中に入るドアの方からは角のせいで階段も非常通路も見えない。
私:「この中に誰か隠れてんの?」
Aの顔を見ると何か怖いものを見たような顔だった
A:「このドア・・・ノックすると返ってくんの・・・」私:「え?w」
私は普段のAの性格から、どうせ騙そうとしてるんだろうと思った。
で、面白半分にノックしてみることにした。
『コンコン』『・・・コンコン』
どうせ誰か隠れているんだろうと私は思ったけれどAは私の肩に手を置き今にも逃げ出しそうな顔をしている。
一旦、Aと一緒にガラス窓から中を除いてみたが、ドアの周りに人影は無いようだ。
A:「ねぇ・・・?一旦戻ろうよ。一階に・・・。」私:「ちょっと待って。」
もう一度ドアの前へ行った。
私は、部屋の中へ入ってみようと思ったのだ。
怖かった。
ガラス窓を覗いて人気が無いのを見て私も段々怖くなってきていたのだ。
・・・・ゴク
息を飲む音が妙に響いた。
ドアノブに手をかけた。
その時――背後から声をかけられた。
「うあっ!!」
私とAは驚いて声を上げた。
声をかけたのは掃除のおばさんだった。
「ちょっと、あんた達学童保育の子だろ?三階に来ちゃ駄目だ。さっさと戻りな。」
私:「あっ・・・でもこのドア・・・ノックすると返ってくるんです・・・」
「?ここはただの物置だよ。」
そう言うとおばさんは急にドアを開けた。
ガチャ
――中には特に何も無い。
「ほら、さっさと行きな。馬鹿らしい。」
そういい残しておばさんは階段を下りていった。
私はおばさんの馬鹿にしたような言い方に腹が立った。
私:「何なのアレ。」
ドン、と私はドアを蹴った。
すると
『アハハハハ』
と笑い声が返ってきた。
これには私もAもかなりビビってダッシュで階段を駆け下りた。
1階まで来ると、丁度トイレに隠れていたBとCが出てきた。
ということは、あの部屋にBもCもいなかったのだ。
私とAは凍りついた。
後に聞いたのだが、あの福祉センターは私が通っていた小学校の跡地だったのだ。
昔火事で焼けてしまい、今の場所に立てられたそうだ。

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