ずっと私の近くにいる女の子
2018/05/28
私が小学生の頃の話しです。
私の家の近くには市民プールがあり、夏休みには友達と毎日のようにそのプールへ泳ぎに行っていました。
ある夏の日も友達と一緒にプールで泳いでいましたが、夢中になって泳いでいる内に友達とはぐれてしまいました。
子供にとっては広いプール、しかも夏休み中とあって人も沢山います。
急に1人になって少し心細かったのですが、まあその内落ち合うだろうと楽観的に考えて泳ぎ続けていました。少し泳いでそろそろプールから上がろうかと思った時に私と同じ位の年齢の、1人の女の子に声を掛けられました。
その子は「1人なの?遊ぼう」と私に笑いかけてくれたのですが、女の子の口の中には何故か歯がなく、
そのせいか少し言葉も不明瞭で、少し不気味な感じの子でした。
最初は怖いなと思っていましたが女の子がしきりに遊ぼうと誘ってくるので根負けして、少しだけ一緒に泳いで遊びました。
一緒に居ると段々慣れてきて、名前を教えあったりして話しをしていましたが、ふと人ごみの中に友達の姿を見つけました。
友達も私に気づいてそろそろ帰ろうと言ってきたので、女の子に「ごめんね、また会ったら遊ぼうね」と言ってプールから上がろうとしました。
途端、いきなり足首を誰かに掴まれて水中に引きずりこまれました。
必死に水面へ上がろうと思ってもどうしてか体が硬直して言う事を聞きません。
そんなに深くないプールのはずなのに、どんどん深い底へ沈んでいってしまうようでした。
息も出来ず苦しくて、ふと足元へ目線をやるとさっきまで遊んでいたあの女の子が
ニタニタ笑いながら私の右足首を掴んでいるのが見え、そこで私は気を失ってしまいました。気付くとそこは保健室のような所で、近くには心配そうな顔をした私の両親と、一緒にプールへ行った友達がいました。
どうやら私はプールで溺れて、そのプールの医務室へ運ばれたようでした。
意識もハッキリしてきたのでもう帰ってもいい、心配なら一応病院へ行った方がいいがおそらく大丈夫だと思うと
医務室の先生に言われたので、その日はそのまま友達と別れて両親と共に家へ帰る事にしました。その日の夜、お風呂に入っている時に右足首に赤黒い痣が出来ているのに気付きました。
その時はどこかにぶつけたのかなと思っていましたが、プールで起こった出来事を思い出しました。
丁度、女の子が掴んでいたのと同じ場所に痣があるんです。
怖くなってすぐにお風呂から上がり、両親の居るリビングへと行きました。
でもそこには私がお風呂に入るまでは居たはずの両親の姿が見当たりませんでした。
トイレか、寝室かそれとも他の部屋かと思って探しましたが父も母もいない所か物音一つ聞こえません。
あり得ないけれど、ちょっと近くのコンビニへ買い物に出ているだけかもしれない、その内帰って来るだろうと
2階にある自分の部屋で待つ事にしました。2階に上がり、部屋に入ってみるとなぜか部屋の床がびちゃびちゃに濡れていました。
水でもこぼしたのかな?と思って近くに行くと、どうやらその水は天井から落ちてきているようなんです。
何だろうと思って見上げるとあの女の子が水の中で見た時と同じニタニタ笑いで天井に張り付いていました。
女の子はびしょ濡れで、その水がぽたぽたぽたぽたと床に落ちて水たまりを作っています。
そして歯の無い口を開けてこぽこぽと泡を吹きながら「きたよきたよきたよきたよ○○ちゃんきたよきたよきたよ」とあの不明瞭な声で言いました。あの声を聞いた瞬間また私は気を失って倒れたようで、再び目を覚ますと今度は自室のベットの上に寝かされていました。
起きた時、そばに居た両親に「今度はお風呂で倒れてたよ」と言われてしまいました。
そしてその両親の後ろにはあの女の子がいて、私をじっと見ていました。あの日から、女の子はいつもあのニタニタ笑いで私を見てあの声で話しかけてきます。
女の子の姿や声は私以外には解らないようで、私も最近では夢なのか現実なのか解らなくなってきました。
でも足首の痣は、だんだんとハッキリしてきて、今では子供が足首を掴んでいるような形になっています。
この痣がもっと明瞭になる頃、私はどうなっているんでしょうか。
