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無人駅の先客

2023/09/21

彼は中学生の頃、電車で通学していたという。

夏のある日、うっかり寝過ごしてしまい、目が覚めて大慌てで車両から下りる。
そこは山中の寂れた無人駅だった。
時刻表を確認してみると、後一時間近くは上りの電車は来ない。

「早まったなぁ。売店のある駅で下りれば、パンとかジュースとか買えたのに」

ボヤきながらホームの奥にあるベンチに向かったが、既に先客が何人か座っていた。
こんな僻地にこれだけ大勢の人がいるとは珍しいね。
そんなことを考えながら近寄っていったが、ピタリと足が止まる。

そこに座っていたのは、すべてマネキンだった。

一体誰が置いたものか。
慌てて踵を返し、ホームの反対側へ向かう。
近よるのが気持ち悪かったし、マネキンを置いた人物にも決して逢いたくなどない。

次の上り列車が来るまで、酷く落ち着かない気持ちだったという。

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