DQNと肝試し
2023/08/09
5年くらい前の学生の頃、友達のKが肝試しスポットの廃病院に行こうと言ったので友達、後輩の5人でパーティー組んで冒険しに行く事になった。
途中のコンビニで懐中電灯買って真夜中の廃病院へ入る。
たたずまいはなかなかのものだ。外に面しているガラスがことごとく割れている。
尾崎ファンのKが尾崎の歌を歌い出した「校舎の窓ガラス割って~」みたいなやつ。
ぶち壊された入口から入ると、散乱したカルテやバラバラになったソファーの残骸なんかに混じって空き缶や空き瓶、紙袋とかのゴミがいっぱいだった。
奥へ進んで診察室の前を通ると、何か気配がする…
入ってみると、DQNが座って酒飲んでた。
男3人女1人、ゴツめの男(以下A)・ゴツめ、かつ目つきがヤバい男(B)・そいつらのパシリみたいな男(以下C)・無口だけどかわいいDQNファッションの女(D)という4人編成だ。
俺らのパーティーで懐中電灯を持ってるのは5人中3人、俺が照らした先はゴツめの男の腰のあたりだったが、ナイフかなんかの武器の柄っぽいのが見えた!と思ったため、すぐにライトをよけた。ああヤバい…なんて思ってるとKが、DQNに気さくに話しかける。
もともとこいつもDQNぽい奴だし、こういう奴らと話するのはうまい。
以下、正確ではないが会話の内容
K「こんばんは、何してるんですか?」
A「ああ、肝試しよ、肝試し。その前にちょっとここで景気付けなんだよ」
K「俺達もなんですよ。ここ怖いっすねぇ」
A「あ?このくらいで怖い言ってたら肝試しなんかやらん方がいいよ
何なら俺達が一緒に回ってやろうか?」
K「おー、いいっすねぇ、行きましょうか」
見かけによらず、フレンドリーな面々っぽいな…などと思ったが、Kを除いた俺含むパーティーの全員が「Kの馬鹿野郎」と思った。
そういうわけで一緒に行動することになって少し歩いた時、俺は9人に増えたパーティーの後ろの方を歩いてたんだが、後輩の一人がやってきて、俺に「Sさん、あいつら絶対シンナーやってますよ!」と話かけてきた。
ヒソヒソとは言え、シーンとしてる中での声だったので俺はめっちゃ慌てた。
そいつを引き止め、さらに前に居るDQNとの距離を取ってから、
俺「馬鹿、声でけぇよ!」
後輩(以下W)「だって最初遭ったときにあいつら紙袋に口つけてスーハーしてたんですよ!?やばいですって!」
俺「マジか!俺はそんとき別のもん見てたから気付かなかった。あいつらナイフ持ってるよな。あぶねぇ奴らだよ。K、軽いからなぁ」
W「ホントっすよ」
けど、そんなこと言っても突然逃げるのもなんか嫌だったし、俺とW以外の3人はDQNの近くに居るから結局付いて行くことにした。
注意しとけば、ラリッた奴らが襲ってこようが楽勝とか根拠の無い自信みたいのもあったし。
前にいる奴らに追いつこうと歩きだしたとき、ふと後ろを振り向くと人影が見えた。
よく見るとDだった。俺は会話の内容聞かれたかもしれん…とビクビクしながら、Dに(多分物凄いぎこちない)愛想笑いしてまた歩き出した。
追いついてみると、そこは婦人科の分娩室っていうのかな。そういうところで分娩台とか流し台っぽいステンレスが置いてあった。
すると、分娩台の周りに黒いシャツと、血の付いたタオルが置いてあるのに気付き、さらに見ると分娩台にも結構な量の血がこびり付いていた。
A「あ、俺のシャツだ。やっぱり前ここ来たとき置いてったか」
B「ばーか、お前が先に出てったからそのシャツ、タオル代わりに使ったよ」
A「何だと?あ!血だ!てめぇ!!!」
もう殺し合いでも始まるかってくらいの雰囲気だった。これには流石のKも引いてる。
そこで、Wが口を開いた。
W「あの…ここでなんかあったんですか?」
Wは普段は真面目で華奢な好青年だが、こういう所で肝が据わってると思った。
しかし、空気読め…そう思ったら、BがWの方に持ってる傘を投げつけた。当たらなかったが。
B「そうなの。俺達ここで女犯したんだよ。処女だったよなぁ○○?(多分Aの下の名前)」
とかヘラヘラしながらWの側に落ちた傘を拾いに行く。Wは凍り付いてたと思う。よく見てないけど。
A「ああ、ありゃぁ良かったぜ~。お前もやりたかっただろ?○○(多分Cの名前)?」
C「うん、やりたかったよぉ…」
いよいよこいつら危ない!まあ俺ら男ばっかだったのがせめてもの救いか…など色々思ってると、
A「そういや、俺たちさぁ、一階はあらかた見たんだけど、2階と3階は見てないのよ。人数居るし、2階と3階手分けして漁ってみっか」
B「おう、そうしようぜ、じゃあメンバーは……」
そういって強引にメンバー分けを始めたようだ。いつのまにかAとBは仲直りしてる。
この態度の急変とかもそれまで見た事なかった。ヤバい、こいつらヤバい…
メンバー編成が決まった。Aが3階、Bが2階に行き、A、Bが交互にメンバー選んで、
A「じゃあ残りは1階な」と言ったらBが奇声を発して廊下に出て階段を上がって行った。やばい。
結局、俺の役目は1階の裏口付近などのまだ見てないところと、見張りみたいな感じでCとDと一緒に組むことになった。
俺の見た目とかで下っ端扱いにされたのか、だから見張りなのか…と納得いかないような、
けど、AやBと一緒じゃないのがホッとしたような気持ちだった。
けど、見るからにパシリみたいなCとかわいいけど無口なDなど居ても何も楽しくない。
黙々と裏口の探検をし、それなりに怖かったものの終了した。
ふと気付くとDが居ない。
探してみたものの、どこにも見当たらなかったので、そのまま外でA班B班が帰って来るのを待った。
そう思って入り口ぼーっと見てたら、そのすぐ横に停めてあったミニバンにDが乗っているようだった。
先に戻ってたのか…俺はCに訊いた。
俺「あの車、おたくの車ですか?」
C「ああ、○○さん(AかBのどっちかわからん)ですよ、かっこいいっしょ!!」
俺「はぁ…、かっこいいすねぇ」
頼むから早く帰らせて…と思った
5分後くらいにA班B班が到着。
Bは最高にハイってやつだ。
出てきてから駐車スペースにある砂利を掴んでは奇声を発しながら地面に思いっきり投げ…と意味不明な行動を何度か繰り返し、
Aも「うぉー!うぉー!」って叫んだりしてた。
俺のパーティーの奴らは普通を装ってたが顔にしっかり疲れが出てる。
K「お疲れ様でーす!どうもありがとうございましたー!」と言い
俺らもそれにならって「ありがとうございましたー!」って言って帰ろうとすると、
「おー!帰るのか!またなー!これおみやげー!」とBが言うと、拳くらいの大きさの石を投げてきた。
誰にも当たらなかったがKの車の手前でバウンドしてバンパーに直撃した。
普段ならブチ切れるKもその時はとにかく逃げることを考えたのだろう、さっさと車に乗り込み俺達全員乗り込むと逃げるように帰った。
帰りの車中、疲れてみんな参っていた。
Kは寝ることにかけては一流なので居眠り防止の為、それとこの静まった空気を嫌って、無理からいろいろ話振った。
2階はどうだったかとか、3階はどうだったかとか、裏口何もなくてつまらんかったとか。
返事は来るんだけど会話が続かない。
そういうことを言ってさらに、
俺「なぁ、女一人居ただろ?レイプしたとか自分の目の前で平気で言う男とよく一緒に居られるよな。実は一番すごかったのってあの女の根性じゃね?さすがに裏口を、知らん男とパシリ野郎で行くのは不安だったらしいが」と言った。
するとWが
W「Sさん、何言ってんすか。女居なかったっすよ?野郎ばっかで良かったって俺思ってたし」
K「裏口はお前とパシリだけだろ?」
他の後輩も「またぁ~!」とか「変なこと言って脅かさないで下さいよ~」みたいに言ってる。
俺「ああ、お前等くらいならもうちょっとビビるかななんて思ったんだがな…ははは…」
そこから俺はしゃべるのをやめた。