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冷たくなった友人

2022/10/08

中2に上がって7月の初め、近所に住んでいる親友のHが
いきなり冷たくなった。
階段を上るHを支えようとしたら(Hは足が悪かった)
「触んな!!」と叫ばれたり、あからさまに無視されたり。
それが物凄くショックで、一時本当に学校に行くのが嫌になった。
しかし、夏休みに入った直後にHから絵葉書が来た。
この2週間ほど落ち込んでいた私にとって、Hが向こうから
連絡を取ってきてくれただけでも本当にうれしかったが、
書いてあったのは一行、
「うちにはもう、近づかん方がいいで」だけだった。

気になって仕方なかったが、数日たってとんでもない事件がおきた。
同学年の女子が、近所の神社で殺されていた。
蛆で真っ白だったらしく、発見者は最初は布袋か何かだと思ったらしい。
Sという派手目で明るい感じの、隣のクラスのリーダー格の子だった。
事件は迷宮入りすることもなく、犯人もあっさり捕まって、不謹慎だが皆ちょっと拍子抜けしていた。
犯人は援交常連の中年男、交渉決裂したのが原因だったと思う。
でも、Hだけはずっとピリピリしていて、やはり私には冷たいままだった。

夏休みも半ば、登校日に私は久しぶりにHと話すことができた。
以前の態度が嘘のように、落ち着いた笑顔で話すH。
放課後、絵葉書のことを訊ねてみると、こう話してくれた。
・SはHが好きで、以前からストーカー同然の行為をしていた
・Sの援交はHに貢ぐため
・この前アクセや現金を渡してきて、「私」と絶交しろ、と詰め寄られた
・絶交しないと「私」を殺しちゃうかも、とまで言ってきた
・Sが死んでしまったので、可哀想だけどちょっと安心した
「心配掛けたくなかったんや」と笑ったHを見てちょっと泣きかけた。
それと同時に、Sが本当に憎らしく思えた。
ただ、私はSの性格を忘れていた。
嫉妬深くて、校則欲の強い我侭な「クラスのリーダー格」

その夜、Hと電話をしていた最中、急に
「ひっ、あ」
と息が詰まるような声を残して電話が切れた。
もう一度掛けても、出ない。
心配になった私は、すぐにHの様子を見に行った。
玄関が開けっ放しになっているのが遠目からでもわかる。
門を開け、玄関までの石畳に踏み出した瞬間
何か固いものが当たった。
同時に「ぷちぷちぷちっ」と言う変な感触が足に伝わってくる。
大量の蛆にまみれた彼女の補助杖が転がっていた。
目蓋がひっくり返る様な感じがした。

Hは、もう多分戻ってこない。
昼ごろには、小母さんの通報で駆けつけた警官たちがうろうろしていて私も色々と聞かれたものの、殆ど答えることは出来なかった。
彼女の部屋はかなり荒れていて、床には潰れた蛆で水溜りができていた。
その中を生きている奴が泳ぐように蠢いている様を見て、
もどしかけた若い警官もいたらしい。
私はというと、打った頭は痛いし、髪の毛に蛆やら嘔吐物やらがこびり付いてしまってとんでもない状態だった。
この頃、学校の机の上、食卓、私室、どこでも1匹は蛆を見る。

私の上に、雨のように蛆が降るのは、もうそんなに先じゃないと思う。

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