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ドーモさん

2021/05/04

高校時代に僕がオカルトで師と仰いでいた人がいた。

僕はその人の事をドーモさんと呼んでいた。ドーモさんは高校が自宅から近い癖に何故か一人暮らしをしてて、当時はよく遊びに行ってた。

一人暮らしってもマンションとかじゃなく、ぼろい一軒家(しかも物置に使われてたらしくがらくたで溢れかえってる)。親の持ち物だから家賃の心配はない。当時はかなりうらやましかった。

高3になったばかりの頃だったと思う。春の肌寒い夜、僕はドーモさん家で酒(生意気にも)を飲んでいた。

その日ドーモさんは、部屋の整理をしながら僕と飲んでたんだけど、いきなり「あ!なつかしいもん見っけ!」と叫んだ。

僕が興味津々に見ると、なんて事はないただの絵本だった。おもしろい物が見れると期待した僕はがっかりして、また酒を飲んでた。

ドーモさんは整理の手をとめ絵本を読んでいる。しばらく携帯をいじりながら一人酒を飲んでいると、なにやらドーモさんの様子がおかしい。ページを開いたまま固まっている。

僕は『?』な感じで、様子を見ていると、ドーモさんは「…そうだった。」と呟いて、ページをめくっていき絵本を読み終えた。

整理をやめたらしく僕の前に座り酒を飲みはじめた。

僕が「そうだったって何が?」と聞くと、「映像が記憶をひっぱってきやがった」と呟いた。

ドーモさんは少し顔色が悪いみたいだった。僕がその意味を聞こうとすると、ドーモさんは自分が子供だった時の事を語りだした。

当時、この家が物置だった頃(今もほぼ物置だが)、ドーモさんはよく遊びに来ていたらしい。秘密基地みたいな感じかな?お菓子や絵本などを持ってきて、一人の時間を堪能してたらしい(子供の癖にw)。

その絵本を読んでる時に、幽霊を見たって。そして約束を交わしたらしい。

なんでも当時ガキだったドーモさんは幽霊に対する耐性がなく、ガクブルで一度見てすぐ、下を向きっぱなしだったらしい。(つまり、読んでいた絵本のページをずっと見てた)

その幽霊はドーモさんを連れていこうとしてたらしく、ドーモさんは「嫌だ」とくびを横にふっていたけど、あまりにしつこいので「大人じゃないから知らない人についていけない。」って叫んだらしい。(全然ガクブルってないようなw)

それから幽霊は消えたらしいんだけど、最後に「じゃあ大人になったら連れていく、約束。」って言ったらしい。

むかし話を終えたドーモさんは酒を煽った。

僕は「は?何それ?何で今まで忘れてたん?」と当然の質問をした。

ドーモさんは「小2の頃に自力で忘れた。」と平然と言った。自力で忘れる?不可能じゃね?僕がそんな事を思ってると、「あれ?ちょっと待ってこれ、あの時記憶と一緒に捨てたはず……2冊あった?待てよ…」とドーモさんがキョロキョロまわりを伺いだした。

この時点でついていけなくなった僕は帰る支度をし、最後に質問した。

「約束…どうするん?」
ドーモさんは満面の笑みで答えた。
「約束は破るタメにあるのだよワトソン君。」
僕はそうこなくっちゃ!と良い気分(微酔いだったし)で家に帰った。

でも高校を卒業してから、ドーモさんは居なくなった。家族でさえも行方は知らないらしい。

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