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事故の記憶

2020/11/05

怖い話には程遠いかも知れないが、人によっては奇妙な話です。
自分にとっては何が起こったんだろうかと言う気味悪い話です。

七五三の日。
家から歩いて数分のところに美容院があった。
七五三祝いに身奇麗に整えて貰うためその美容院に行くことになっていたが、朝から土砂降りだったため、近場とは言え美容院へは母親が運転する車で移動した。
後で父親は自分の車で美容院に合流、そのまま神社に行くことになっていた。
しかし母親が何かを忘れたと言い、自宅へ忘れ物を取りに向かったのだが、その時ドカーンと言う大きな音がなった。
その凄い音は、停車していた父親の車に母親の車が突っ込んだ音で美容院は一時騒然。
全身切り傷だらけだが意識もあり立って歩ける母親が美容院に来たのが自分にとって衝撃的だった。
その後、母親は救急車で搬送され父親は付き添いで行ってしまい、自分は伯母に連れられ傘をさして歩いて自宅へ帰った。
事故は当時土砂降りで美容院の駐車場に停車していた父親の車がよく見えなかったことと、神社の予約時間に焦ったせいだと言う。

数十年後、今はその美容院も無くなり、そういえば近所に○○美容院って言うのがあったねと、母親と何気なく思い出話となった。

自分「そういえば、事故。あれには驚いたよ~」
母親「事故って?」
自分「お母さん、お父さんの車にぶつかって事故起こしたじゃん」
母親「何のこと?」

父親にも、伯母にも、当時美容院を経営していた小母さんにも聞いたが誰も彼も事故なんて無かったと言う。
当時、土砂降りだったことや美容院の立地、駐車場の位置、周囲に聞くとどれもこれもその通り。
意識のあった母親が全身切り傷だらけで、美容院の玄関に呆然と座り込み体を横たえていく一連の記憶と父親の怒鳴り声、救急車を呼んでいる美容院の小母さんの声とか、騒然としている周囲とか・・・。
だが、過去一度も事故を母親は起こしていないと言った。
ならば、自分のあの記憶はいったい何なんだろうか。
子供がよく何かの記憶と混合したり、夢で見たことを間違えてりとそれと同じようなものなのかな、と自分でも思ったが、それにしてはあまりに記憶が詳細過ぎて気味悪いです。

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