母ちゃんが迎えに来た
2020/08/24
父親の親戚の話。
その親戚の人(仮にAさんとしておく)は、
農作業中に誤って振り下ろした鍬を
自分の足にヒットさせてしまい、足を大怪我してしまった。
医療技術も進歩していない昔でおまけに片田舎であったから、
Aさんは片足切断の上、死線を2~3日さまよったそうだ。
それもどうにか小康状態をむかえ、
安心した家族はひとまずAさんを自宅につれて帰った。
そしてその夜。
Aさんとふすまを隔てた隣で寝ていたAさんの家族は、
隣室から聞こえるただならぬうめき声で目を覚ました。
慌てて起きてふすまを開けると、
Aさんがものすごい形相でうなされている。
すぐにAさんを起こしてみると、
怯えきった表情で天井を指差し
「母ちゃんが迎えに来た! 母ちゃんが迎えに来た!」
と繰り返すばかり。
しかしAさんの母親はこのときすでに亡くなっている。
Aさんの家族もぞっとして天井を見上げると、
そのトタン張りの屋根の上を、二本足の何かが
ものすごい勢いで駆けぬけていったそうだ。