殺された母の行方
2020/08/23
ある所にとても仲の悪い夫婦と、
その二人の間に生まれた小さな男の子が住んでいた。
ある日のこと、妻との言い争いの最中に激昂した夫は
思わず包丁で妻を刺し殺してしまった。
我に返り青ざめた彼は台所の床下に穴を掘ると、
そこに妻の死体を埋めた。
自責の念から自首することも考えたのだが、
残された息子があまりにも不憫でならない。
そこで息子には「母さんは遠いところへ旅に出た」とだけ告げ、
近所の人たちには「実家へ帰っている」と嘘をつき、
ごまかしとおすことにした。
ところが、その日からどうも息子の自分を見る目がおかしい。
もしかしたら、見られたのか?
そうだとすれば仕方がない、いっそのこと息子を殺して自分も・・・
そんな考えに追い詰められたある日、彼は食事の席で息子に
「一つおまえに言っておきたいことがある」と言った。
我が子を手にかける前に、真実を伝えておこうと思ったのだ。
ところが、彼が次の言葉を発する前に息子がこんなことを聞いてきた。
「お父さん、僕もお父さんにどうしても聞きたいことがあるの。
お父さんは、どうしてずっとお母さんをおんぶしているの?」