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帰ってきた気配

2019/12/20

夜遅く帰ると
「あれ 今帰ってきたの?」
と母が言った。
そうだと答えると
「ふうん。」
と首をひねってから私に背を向けた。
何か合点がいかないようだった。
多少気になったものの飯を食べ終わる頃には、
そんな事 忘れてしまった。

何日か後。
夜遅く帰ると
「あれ 今帰ってきたの?」
と母が言った。
そうだと答えると
「ふうん。」
と首をひねってから私に背を向けた。
何か合点がいかないようだった。

そしてある秋。
夜居間でくつろいでいた私は頭上から聞こえる微かな音に気付き
天井に目を向けた。
台所に居た母が炊事の手を止めた。
「音と気配」が二階の部屋を ややゆっくりと歩き回っていた。
きちんと人間の体重が乗った音。

「・・・これかい?」
と 私は尋ね
「・・・そう これ。」
と 母は答えた。

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