肝試しを兼ねた旅行
2019/12/05
この間の肝試しの話。
俺は女顔のためによく冗談で可愛いと言われてしまう。
男の子だからやめてくれって言い続けてたんだが、
バイト先でずっといじられるものだから男の子らしいところを見せてやろうと肝試しに行くことになった。
どこに肝試しに行くか品定めしてたところ、トンネルやお墓が候補としてあがった。
お墓に話がまとまりかけたところ、バイト先のお局さんがある旅館を紹介してくれた。
なんでもお局さんの親戚の旅館は一つの部屋がよく「でる」せいで経営が厳しいという。
お局さん自身は「怖いから行かなーい、可愛い後輩が行くって伝えとくわー」とか言ってまたいじってきた。
そんなこんなで、バイト先の先輩であるAとBと俺の3人で、その旅館に肝試しを兼ねた旅行に行くことになった。
その旅館は田舎でもなく都会でもない中部地方のある温泉街にあった。
街中に馴染んでたから、本当に曰く付きだとはじめは思わなかったくらいだ。
話にあった部屋に案内される時にかなり心配されたものの、
知り合い割引で宿泊費を格安にしてくれたこともあってこちらから頼み込む形で泊まることになった。
詳しく話を聞くと、その部屋では女の霊がでるらしかった。
自殺があったりだとか旅館が戦場だったりだとか、そういうよくあるフラグが全くなかったため
俺達は拍子抜けして完全に観光気分に切り替わっていた。
その部屋は中くらいの部屋で、手前のこたつの部屋と襖を挟んだ奥の和室に分かれていた。
でるという部屋は手前のこたつの部屋で、俺達は温泉に入って飲み会をした後分かれて寝ることになった。
皆酔っていたためここへ来た意味なんかすっかり忘れて、
大富豪で負けたAがこたつの部屋に、俺とBが奥の和室に寝ることになった。
俺とBは布団に入ってからしばらくバカ話をして、その流れでAを脅かしに行こうということになった。
いきなり襖をバーンと開けたらびっくりするだろうと二人ともノリノリだった。
しかしBが襖を勢いよく開けたところ、とてつもない違和感に襲われた。
Aが口を開けて座っていたのである。
BがAの元にかけよろうとした瞬間、俺は気づいてしまった。
Aは止まってるんじゃない、動きがスローになっているんだと。
そして目線の先の押入れが少し開いており、そこに何かがいた。
見てはいけないものだと思って後ろに逃げようとしたら、背中が凍りつき冷や汗が出てきた。
そして押入れからよくスロー映像とかで流れる低音で
「があああああああああああいいいいいいいいいいいいい」
という音が聞こえてきて、俺はゾッとすると共に視界がグルンと反転した。
AとBに揺さぶられて目が覚めたのは翌日の朝だった。
どうやら気を失ってしまっていたようだった。
AとBも気を失っていて、俺より早く目が覚めてからずっと俺を起こそうとしてくれていたらしい。
三人で何故かお互いに謝りあって最終的にお酒のせいになったが、
俺は慣れていたせいであの声が聞き取れてしまっていた。
あれは「可愛い」と言われたんだ。
今度お祓いに行こうと思う。