僕の親友の小学校時分の話
2019/11/15
今から二十年も前のある日。
両親が共働きだった彼は、学校から帰ると
一人、居間でテレビを見ていた。
しばらくすると、玄関の引き戸が開く音がするので
母親が帰ってきたと思った彼は、驚かせてやろうと
居間の入口の引違い襖のそばにしゃがみ、足音がよく
聞こえるようにと襖に耳を押しつけて母親を待ちかまえた。
足音は玄関をあがり、板敷きの廊下を居間に向かって近づいてきて
彼が身を潜める襖の前にきた。
しかし、その足音は入口まできたものの、襖を開けようとしない。
おかしいと思った彼は外の様子をうかがおうと、
いっそう強く襖に耳を押しつけた。 すると
……ガリ……ガリ……ガリ…。
廊下の向こう側からゆっくりと爪で襖をひっかく音がする。
驚いた彼はしばらくその場で硬直したが
意を決して襖を開けると、ものすごい勢いで
廊下を玄関に向かって走るハイヒールの音だけがした。 そうだ。
その後彼は自宅で幾度と無く女の幽霊(?)に悩まされることになる。
作り込みいっさい無しのほんとの話。