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いいところに行こうね

2019/09/20

小学校にまだ行かないころの記憶。
母親が
「いいところに行こうね」
と言って、自分の手を引いて家の外に出た。
どこか楽しいところに連れて行ってもらえるんだと思って、
嬉しくなって一緒に歩いた。
しばらく歩いた後、
母親は踏み切りのところで立ち止まって動かなくなった。
電車が来ているわけでもないのに、
なんで踏み切りを渡らないのか不思議だったけど、
自分も黙って一緒に立っていた。
その内に遮断機が降りて、電車がやってきた。
そうしたら母親が、
ものすごく強く自分の手を握り締めた。
電車が通り過ぎて遮断機が上がっても、
まだ母親は歩き出さなかった。
何回も電車が通り過ぎて、
そのたびにぎゅーっと握られた手の感触の記憶が残っている。
今も人と手をつなぐのが嫌いだ。

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