波間に人形が浮いている
2019/07/28
地元の話。
そこは灯りの少ない港で、あまり人気のない釣り場ながら、
大型のチヌが釣れると言われている穴場的な釣り場。
夕方からテトラポットの上に釣り場を構えて釣りをしていると、
波間に人形がプカプカ浮いている。
「気持ち悪ぃ~」
特に薄気味悪い人形ではなく、
子供が持つような何処にでもある人形だが、
汚く汚れている人形がプカプカ浮いてるのは気持ち悪かった。
網ですくってテトラの隙間に捨てた。
その日は特に潮の流れもなく、
しばらくして電気ウキを見ていると、
「あれ…何だあれ……」
海面に少しだけ見えている物は、
さっき捨てた人形だった。
少し不気味に感じたのだが、
潮の関係で流されたのか…と安易に考えて、
そのまま釣っていた。
人形は波に流されるままテトラ際まで流れ着き、
プカプカ浮いている。
「…」
どうにも気になったので、
また網ですくい上げ、
少し向うのテトラの隙間に投げ込んだ。
気持ち悪ぃナ-…と思いながら釣りをしていると、
数分後にまた同じように人形がプカプカ浮いてきた。
仕方なく同じ事を繰り返し、釣りに集中する事に。
それでも繰り返すように、
投げ込んだはずの人形が自分の電気浮きの方に流れて来る。
「!?」
不気味な現象に、
自分が投げ込んでいたテトラの隙間をライトで照らすと、
そこには自分が投げ込んだ数だけの人形が転がっていた。
投げ込もうとした人形を手に持っていたので慌てて捨てて、
釣り場を変えようとした時には、
すでに新しい人形が電気浮きの側に浮いていた……