ネット上に存在する不思議で怖い話を
読みやすく編集・修正してまとめました

本文の文字サイズ

神様の通り道

2019/07/19

かなり前のことですが、私は当時高校生で、
母と犬とで車で近場に買い物に出掛けていました。
帰り道、犬が鳴き始めたので、
少し散歩させようと車を止めました。
ふと横を見ると、
いかにも村のお社といった雰囲気の神社がありました。
周りはごく普通の住宅街で、
母はその辺りを犬を連れて歩いてくると言うので、
私は神社を見てくることにしました。
神社はこざっぱりとしていて、雰囲気も静かであたたかく、
きれいに掃除もされていました。
社務所は無く、参拝客は私以外はいませんでした。
二十段もないような石段を登ると、
石段の一番上に小さな紙が落ちていました。
なんだろうと思って拾ってみると、
そこには印刷で短い祝詞が書かれていました。
シンプルな短い祝詞で、覚えやすくて気に入ってしまい、
私はその紙がとてもほしくなりました。
落ちていたものだしいいかな…とも思ったのですが、
持って帰るのは盗みのような気がして、
紙はしばらく眺めて祝詞を覚えた後に、賽銭箱の近くに置いておきました。
お参りを済ませ、私は神社の建物が見たくなり、社殿の横に回りました。
拝殿と本殿の間は渡り廊下でつながれおり、
その渡り廊下の横に行くと本殿がよく見えました。
人もおらずゆっくりと見ることが出来て、
わあ、こんな風になってるのか、と私は喜んで眺めていました。
そして、ふと渡り廊下の向こう側を見た時、
何故か、その渡り廊下を横切って向こう側に行かねばならない、
というような気がしたのです。
自分でも意味が解らなかったのですが、
ともかくこの渡り廊下の手すりをよじ登って越えて、
渡り廊下を横切らねばならない、
なんとしてもそうしなければならない、
という思いに駆られたのです。
しかし、渡り廊下は神様の通り道のはず。
横切るなんてまずいんじゃないのか。
そんなことを考えながらも、
私はいつの間にか手すりに手を掛けていました。
妙に頭がぼーっとし、周りの音が聞こえなくなりました。
『ほら、ここには誰もいない、周りは杜だから外からも見えない。
この渡りの手すりをよじ登れば、真正面から本殿が見られる。
なかなか見られるものじゃない。神様と同じ視点だぞ…』
と、何故か心の中で強く思いながら、
私は手すりに足を掛けてよじ登り、渡り廊下に立っていました。
と、その時。
母が神社の外から呼ぶ声がしたのです。
私ははっと我に帰りました。
見れば、神社の渡り廊下に突っ立っている自分。
外からは母が、姿の見えない私を心配して何度も呼んでいます。
私は急に怖くなりました。
母にちょっと待ってと返事をし、ちらりと本殿の方を見てから、
私は入ったのとは反対側の手すりを乗り越え、渡り廊下を横切りました。
こうなったらいっそちゃんと横切ってやると、
負けん気が起きたものですから。
神社の裏側から出くると、母が入口で心配そうに待っていました。
犬は母とは対照的に、のんびりと座って待っていました。
気になって振り返ると、
賽銭箱の側にきちんと置いたはずの祝詞の書かれた紙は、
何故か最初の石段の所に戻っていました。
なにがなんだかよくわからないまま、一ヶ月ほど後のことです。
再びその神社の前を通ると、ちょうどお祭りをやっていました。
この間のこともあったし少し気になって、私は神社に寄りました。
たき火をしていたので、参拝の後にあたらせてもらっていたら、
横にいたお爺さん達が話しかけて来たので、おしゃべりしていました。
お爺さんは地元に長く住んでいる人だというので、
「叱られるかもしれないんですけど」
と前置きして謝ってから、
お爺さんにこの間の渡り廊下のことを話したのです。
するとお爺さんは、
「久しぶりにそういう話を聞いた」
と言い出しました。
なんでも、そこの神様は悪戯好きで、
昔は時々人引っ張り込んでは、ご神木に登らせたり、
神楽の舞台に上がらせたりしていたそうです。
「あんた真面目そうだし、神様にからかわれたんだなあ」
と、お爺さんは笑いました。
帰る前に、前に覚えた祝詞を唱え、
お爺さん達からお餅を貰って帰りました。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

人気の投稿

人気のカテゴリ

RSS