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人形の声

2019/07/19

急に昔の話を思い出した。
いつの頃だったかはよく覚えてないけど、
小学生の頃だから十年は前。
お爺ちゃんの知り合いから、ある人形を貰った。
人形劇なんかで使う、上から糸で吊るして動かせるやつ。
当時の自分は動くのが面白くて、よく適当に動かしたのを覚えている。
遊び続けるうち、俺はその人形の声みたいなのが聞こえるようになっていた。
その人形とは他愛のない話ばかりしていたけど、
大事な出来事の直前にはよく教えてくれていたから、すごく大事にしていた。
ある日、いつものように人形を動かしながら会話していると、人形が突然、
「そろそろいかなきゃ、ごめんね」
と言った。
俺は泣きながら
「行かないで」
って頼んだけど、人形は頑なに
「いかなきゃ」
と言い続けた。
その言い合いをしているうちに、人形は
「いまはなさいとこうかいするよ」
とだけ喋った。
その一言が妙に怖くて、
人形を吊るしていた棒から手を離すと、
人形は床に吸い込まれた。
消える瞬間に、
「こうならなくてよかったね。いままでたのしかったよ」
とだけ聞こえた。
夢だったらそれで良いんだけど、
親なんかはその人形で遊んでいたことを覚えているし、
「昔はよく予知してたよね」
なんて言われることがあるから、事実だと思う。
それと、人形が最後に言った
「こうならなくてよかったね」
ってのが、思い出す度に気になっている。

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