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修羅場の妖精さん

2019/07/11

年末年始あった驚きの体験。
その日、私は締め切り迫った原稿を前に、
ネタが出てこなくて困ってたんだけど、
ふと気付いたら、作業用の小テーブルの端に、
男の子が立ってこっちを見てた。
真夜中に一人暮らしの女の部屋にいる、
という以外は別に変わったところもない子。
ぽかんとしてる私に、
「手伝ってあげようか」
って言ってきた。
返事をしなかったから二、三回。
そのうち寝不足も手伝ってか、
これがきっと修羅場の妖精さんなんだって思って、
「手伝っちゃだめ?」
って質問に、
「ぜひ!」
って返事した。
だけど、体育座りしてるだけで何もしてくれない。
まあいいや、ほっとこう、と思って原稿に向かった瞬間、
それこそ溢れるようにネタが湧いてきて、これはいい!と全部メモした。
それでもまだまだ出てくる。
ついには原稿の裏まで使って書きとめて、ほっと顔を上げたら、
その子がじーっとこっちを見てて、
「本できそう?」
って聞いてきた。
余ってたページどころか、あと五、六冊ほどできそうで、
嬉しさのあまりハイになって
「うんうんできる。いっぱい!」
って言ったら、
「よかった」
ってにっこり笑って、すうっと消えた。
これは事件だーって、同じように修羅場だった友達に電話したら、
ものすごく冷静な声で『いいから寝ろ』と言われて、
電話を置いた後記憶がない。
気がついたら午前十時だった。
夢かと思ってテーブル見てびっくり。
メモが全部あった。
二度目のびっくりは新年明けて、彼氏の実家に遊びに行った時。
アルバム見てたら妖精さんがいた。
彼氏の子供の頃とそっくりなんだ。
顔も髪型も。
私がじっくり見てたら、
「俺、かわいいだろー」
って上機嫌なってたけど、さすがに言えなかった。
ただ、年末原稿かかりっきりでデートのお誘い何回も断ってたから、
寂しくって早く上がるよう手伝いにきてくれたのかな、と今は思ってる。
ちなみに私、そのアルバム見るまで、彼氏の子供の頃なんて見たことなかった。

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