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身代わり

2019/06/24

私の友人が飲食店の店長をする事になった。
その店に行きたい行きたいと思いつつ、都合がつかず、
結局その店に行けたのは、オープンから一ヶ月が過ぎようかとしている時だった。
忙しそうに働いていたが、何とか友人が時間を作って席まで来てくれた。
けど顔を間近でみて驚いた。
土気色といか…不気味なくらい顔色が悪く生気が無かった。
話を聞くと、オープン前から二ヶ月近く一日も休日が無いとの事。
しかも朝の7時起きで、仕事が終わって家に着くのは午前3時。
仕事内容は一日立ちっぱなし、事務的雑用も友人が一人でしていた。
店長である友人は雇われ店長だけど、
補佐役の人がまだ未熟で任せられないから、
そんなハードワークになってしまっていると。
友人は泣きそうな顔で、肩が痛い、腰が痛い、首が痛い、
頭が痛い、足が痛いと何回もつぶやいてた。
休みを貰いなよと言っても、
「忙しい今は自分の代わりがいないから無理だ」
と首を振った。
「明日は本当に大事な予約が入ってるから、今すぐ過労で倒れても休めないや」
と力無く笑った友人を見て、本当に心が痛んだ。
家に帰り、何か力になってやりたいのに何にも出来ない自分を恨めしく思いながら、
その夜はいつまでも寝付けなかった。
翌日に目を覚ますと、身体中が今まで体験したことの無いような痛みにおそわれていた。
とにかく、頭のてっぺんから足の先まで痛くて痛くて涙がでた。
身体に力もはいらないし、何をするも気力がわかない。
結局その日は、風邪でもひいたんだと一日大人しくベッドの中で過ごした。
夜になって友人から電話がかかってきた。
何故か今日は昨日までの疲労が一切なく、嘘のように元気になったと。
肩も、腰も、首も、頭も、足も、全く痛くないし、顔色も久しぶりに良かったと。
『おかげで大事な予約も無事に今終わったんだ~』
と声も弾んでいた。
その時、私が一日中苦しんでいた痛みの理由が分かったような気がした。
翌日に目を覚ますと、前日の痛みが嘘のように無くなっていた。
その後、友人は少ししてやっとまともな労働環境になった。
今では独立して自分の店をもって、そこそこ評判の繁盛店になっている。
私はあの日の事を友人に話した事もないし、今後話すつもりもない。

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