吉野川のキャンプ場
2019/06/15
小学校5年の夏、
奈良県の吉野の方が母の実家で、
帰省かねて家族で遊びに行った。
普通なら実家に連泊するんだが、
その夏はキャンプ道具一式もっていったので、
吉野川の流域のテント張れるところで、
キャンプして遊ぼうという計画だった。
で、計画通り、朝から出発し、キャンプ場についた。
吉野川は川の流れも早く、普通は危なくて泳げない。
ところが、キャンプ場のところだけは
せき止められたようになっていて、
ちょうど小学校の講堂の半分くらいの面積のところが、
池なみに流れもほとんどなく、
着いた昼頃には、川岸というより『池』岸には
中学生の団体らしき先客がいて、人工プールのようになってた。
水深は2mぐらい。ちなみに俺は2Kmぐらい泳げた。
早速テントをたてて、水着に履き替え、泳ぎだした。
しばらく泳いでいたが、青い空を見たとたん
(変に印象的だったからあえてそう書く)
フッと意識が遠ざかって、俺は動けなくなって沈んだ。
おやじが飛び込んで助けてくれ、俺は事なきを得た。
その夜、テントの中で
「おまえどうしたんや?心臓も悪ないのに?」
と父が聞いた。
「いや、分かれへん。
あんなん初めてや・・なんか変な気分やった」
とりあえず水泳は中止し、
別のところでまたテントを張ったあと、
母の実家に戻った。
「お帰り。疲れた?」
と叔母がねぎらってくれたが、
奈良新聞を読んでいた叔父が、
「ほー○○で子供溺れて死んだって」
といった。
「えー」
と叔母がそれに呼応した。
記事を読むと、ちょうどサマーキャンプで
川遊びをしていた団体の子供が、
水泳中に溺れて誰も気づかず、翌朝発見されたらしい。
それは俺がちょうど溺れた場所で、日時も同じだった。
「○○もそこで溺れよったんや」
と父がいって、
「おまえ足引っ張られたんと違うか?」
と俺に冗談めかしていった。
叔父は、
「あそこ3つの流れ入ってきてるやろ?
温度差で人間の体ショック受けることもあるらしいで・・・」
ひとしきりその話をしたあと、別の話題へと変わっていった。
偶然ということもあるかもしれない。
叔父がいうように環境的なことかもしれない。
でも、あの時見た『青い空』には、今思い出しても、
不気味さと不思議な寂しさが入り交じったノルタルジーを感じる。
俺は気づかなかったが、その時、本当は俺の真下に沈んでいて、
足を引っ張って助けを求めたのかもしれない。
また、そうでなくて全く偶然でも、
溺れた子も同じ青い空を見たのだろうか?
もし見たのなら、それがその子にとって、
最後のこの世での風景だったに違いない。