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遺影写真

2019/06/15

自分の勤めてる会社、
コンピューター関係で色々やっているんですが、
業務の一環で葬儀の遺影写真も作ってます。
取引先の葬儀屋さんから、メールとか、
リモートで原稿写真を取り込んで、
遺影写真として仕上げるんです。
もう3年位前の話。
取引先から、
『いまメールで送った写真お願い……
ちょっとすごい写真なんだけど……』
と、ミョウ~に歯切れの悪い感じで連絡がありました。
嫌~な予感がしましたが、毎度の事で、
戦前のえらい古い写真とかかなぁ位に思いました。
丁度、お昼前で、他のスタッフは部屋を出ていて、
たまたま製作ルームには私一人でした。
メールを受け取って、
添付されて来た写真のデーターを開きました……
ギャーでした。
我ながら意味不明の悲鳴をあげて、
お隣の社長室へ逃げ込みました。
ここ十年位、
あんな悲鳴を上げた事はないでしょう……
私の悲鳴を聞き付けて、
社長も部屋から出てきました。
もう、セクハラもなにもあったもんじゃありません。
(この時点で、ボロボロ泣いてたと思います、怖くて…)
社長にしがみ付きました。
とにかく、今届いたデーターを見て頂戴とお願いして、
社長を製作ルームへ放り込みました。
「ウッ!!」
っと言ったきり、社長も涙目で出てきました。
(因みに、私は女性です。社長は60過ぎの男性ですが)
とてもじゃないけど、
あの写真は1秒と見てられないし、
ましてや、遺影として
加工出来るもんではありませんでした。
ホラー映画に出てくるゾンビとかなんて可愛いものです。
『あの写真は実は、あれは、
スプラッタ用の特殊マスクなんだよ~』
って云われたら、信じられるかもしれません。
TVでは、きっと放送コード?とかに触れて、
放映出来ないでしょう。
(故人様には、誠に申し訳ない限りです…)
結局、お取引先には事情を説明して
(社長が)お断りいたしました。
『やっぱり、無理だよね~。
自分も撮影する時、背筋が寒かったもの……』
そう、写真は生前のものではありませんでした。
(普通遺影は、生前撮られた、
スナップとか肖像写真から作りますよね)
これは死後撮影したものです。
それも、俗に云う孤独死と云うもので、
死後1週間発見されなかったとか……
遺族の(孤独死なのに遺族が見つかったというのも奇跡ですが)希望で、
デスマスクから生前の顔を復元出来ないか、
との依頼だった様です。
(生前の写真が見つからないとのことで…)
警視庁の複顔の様な
すごいテクニックがあれば出来るのでしょうが、
一民間企業には無理です。
ましてや1枚のポラロイドからなど…
会社のスタッフ皆見ましたが、
3秒と見れませんでした。
うちの会社は業務時間が長くて、
2交代制で夜5時~9時までは
スタッフ1人で待機するのですが、
このデータが来てから
(勿論、データーは翌日消去させて頂きましたが)2週間程、
男性ですら(遅番は基本的に男性待機なんです)
「1人待機は、かんべんしてください!!」
との事で、3人位で終業時まで待機してました。
(大袈裟ですが、見た者しか解らない恐怖だと思います)
もう、3年前の話ですが、
故人様のご冥福を切にお祈りします。
又、ご葬儀関係会社の方、
ご遺族の皆様にくれぐれも、
ご遺影用のお写真は
『生前』撮影されたものをご用意下さい。
(って云っても、
半年に1回位有るんだよ~デスマスクのが~)
今でも社内では、何かあると
「そーいえば、あの写真さぁ~」
っと、フッと話題に上る
インパクトのある写真でした。

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