絆創膏
2019/06/06
俺の思い出。
幼稚園のころ、ころんでひっかき傷つくって泣いてたら、
同じクラスの女の子に絆創膏をもらったんだ。
金属の箱に入ったヤツ。5枚ぐらいあった。
「全部あげる。無駄使いしちゃだめよ」
って。
家に帰っておふくろに
「絆創膏?ケガしたの?」
って言われたんで、剥がしてみせた。
ケガなんてどこにもなくなってる。
不思議だったけど、絆創膏のパワーだと信じた。
何日かして朝御飯のとき、
自分のお気に入りの茶碗にヒビが入ってるのを発見。
ガキの浅知恵だよね。
ヒビに絆創膏はってみたんだ。
・・・夕飯のときにはがしたら直ってた。
手押し車にアヒルがついてるおもちゃ。
アヒルの首が取れちゃったんだけど、
絆創膏はっておいたらやっぱり直った。
大切に使わなきゃと、さすがに事の重大さに気づいた矢先、
うちの猫のヤーヤが車にひかれた。
残ってた絆創膏全部はって、
毛布をかけて幼稚園休んで看病した。
泣き疲れて寝ちゃったんだよね。
ヤーヤに顔をなめられて目を覚ました。
治ってたんだ。
傷なんか痕すら残ってない。
明日幼稚園いったらミヤちゃんにお礼言わなきゃ。
「絆創膏くれてありがとう」
って。
幼稚園行って気づいた。
ミヤちゃんなんて女の子はいない。
絆創膏をもらった時以外に、彼女を見たことなんてなかった。
なのに僕は彼女を見たとき、ミヤちゃんだと何故だか思った。
そういえば、ヤーヤを産んですぐに死んでしまった母猫もミヤだった。